第一章それそれとこれこれ・4

 暗い、その闇の中に少女が一人いた。

彼女は鏡に向かって話す。

「Mortuus est.(奴よ死ね)」

私にはそう聞こえた。

きっとこれはラテン語だろう。

彼女は何かを呪っているようだった。

彼女が私に振り向いた。

顔は、顔は、顔は、、、

分からなかった。


「はっ!」

 私は息を吹き返し目が覚めた。

汗をかいている。

なんだ、、悪い夢か、、と思ったが、いかにも生々しい夢であった。

私は、学校へ行った。


 朝、やはり人はいない。

しかし新庄はいた。

私は今日も新庄に声をかける。

「おはよう!」

彼女は無視をする。

「ねぇねぇ、休日とかって何をしているの?」

彼女はまた無視をする。

 私はただただ彼女のことが知りたい自分に気付きつつあったが、結菜が教室に来て私に言うのだ。

「新庄さんは何も話さないんだから話しかけるのは可哀想よ。」

と言う。

その後、こうも言われた。

「昨日のことだけどさ、菜音、バンド入ってくれるよね?」

私は「うん」と言ったがそれは放課後「やっぱり断らなきゃよかったな」と思うことになる。

 放課後、私はシンセサイザーを持ってまた音楽室へ行った。

高田は言う、

「ベースやってくれるの?」

「シンセベースだけどね、まぁキーボードがへっぽこだったり、ドラムがへっぽこだったらMacとシンセで全部補うわ。」

中々、勝ち気なことを言ってしまった。でもその発言も現実味を帯びてくるのかもしれない。

 私たちはまず、結構簡単な某青春ラヴソングをカバーすることになった。

まず、ドラムが「感覚で叩くわ」とかいう馬鹿なことを言い始めてガシャガシャ汚く叩くし、ボーカルも下手で声が小さい。キーボードはなんと両手弾きができない。

もう絶望的だ。

 でも、高田のギターは美しかった。

私はギターは下品な楽器だと思っていたが素晴らしい。

「きっと練習すれば大丈夫さ!」

と伊藤が言うが、それはできる奴が言うセリフでお前が言うセリフじゃねえだろと思ってしまった。

その日はその某青春ラヴソングを練習して1日が終わった。

 帰宅し、母と、

「ナオさ、最近学校生活はどう?」

「う〜んバンドでシンセを弾いてるけどみんなダメダメだわ。」

「みんなナオみたいに幼い頃から音楽をしていないんだから色々我慢しなきゃいけませんよ」

と会話する。

母の言う通りにできればなんて簡単だろう。

 電話で山口にこの話をしたらこんなことを言われてしまった。

「それそれとこれこれ、みんなで同じ作品を作るんだから、みんなのレヴェルに合わせてやれよ。」

って、みんな同じことを私に言うんだから、、、。

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