51.捕手を信じてストレートを放った

 白球が夏を切り裂いて、キャッチャーミットに到達する。

 一番打者のバットはただ空を切るのみ。

 次々に三振を量産し、君は先発投手としての役割を果たした。

 捕手がマスク越しにニヤリと笑い、君も笑いを返す。

 シンプルなストレート、それが君たちの何よりの武器だ。


「ストラーイク!!バッターアウッ!!!」

「ストラーイク!!バッターアウッ!!!」

「ストラーイク!!バッターアウッ!!!」


 君の放つ白球が土に汚れたことはない。

 破竹の勢いで君たちは甲子園を勝ち上がっていく――そして、決勝戦。


 出塁無し、相手は四番打者。

 捕手の出したサインは――カーブ。

 相手打者は今年度最強の直球打ち――そして、変化球に弱いという情報がある。

 自分のストレートで勝負したい――そんな気持ちがある。


 君は――


 ストレートを投げた。


(目に見えぬ誰かの指示に従ってきた……けど、今だけは……今だけは!!!)


 相手打者の豪快なスイング。


(俺の戦いなんだよッ!!!)


「ストラーイクッ!!」


 白球はキャッチャーミットにおさまった。

 二球目は何を放つか、やはりストレートか、それともカーブか。

 いずれにせよ――


 これは彼の戦いだ。


【自分の戦い END】

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