37.君は日頃の勉強の成果を存分に発揮した

 初めてのテストが終わり、赤く色づいた答案用紙が帰ってくる。

 学年全体でも上から数えたほうが早い――と言っても、別に下から数えたってそこまで大変なわけでもない、ため息が出るほどに優秀な成績というわけでもないが、胸を張って家に持って帰ることが出来るぐらいの点数であった。

 

「やあやあ、キミの点数はどんなもんだったかね」

 ニヒヒと笑いながら、点数を伺いに来る広井さんに君は黙って答案用紙を見せつけた。


「んむむ……同点かぁ」

 君と広井さんの得点は同じだった。

 引き分け――勝負は期末テストに持ち越しといったところだろう。


 それから君たちはまた勉強を行い――そして、迎えた期末テストの日。

「ンヒヒ、どんなもんだい」

 そう言って広井さんが君にVサインを送る。

 十点ほどの差をつけて、広井さんが君の得点を上回ったのだ。


「んじゃ、ジュースでも買ってもらおっかなぁ?」

 次こそはと勉学に励むも、やはり広井さんの得点は君を上回る。


「よし!じゃあ~……鯛焼き買ってもらおうかな」

「アタシの肩でも揉んでもらおうかなぁ」

「日曜日はアタシの荷物持ちだよ、キミ」


 小テストならば満点で引き分けぐらいにはなるが、中間テストぐらいに範囲が広くなるとやはり広井さんが勝つ。

 何か秘密でもあるのか、一度も勝てないまま、一年最後の期末テストを前に広井さんが言った。


「アタシさ、真剣ガチゼミやってるんだ」

真剣ガチゼミ?」

「要点を抑えて、試験範囲をきっちりカバー。受講生の系統も把握して苦手もきっちり克服出来るようになってるの」

「……でも、ただでさえ勉強してるのに、余計に時間が無くならないかな?」

真剣ガチゼミなら一日三十分の勉強で大丈夫なんだよね……ね、キミもやってみない?」

「それが広井さんの秘密……でも、なんで俺に教えたんだ?」

「ンヒヒ……」

 広井さんは照れくさそうに笑った後、こう言った。


「んー……キミが一回ぐらい、アタシに勝つところが見たいかなって」


 それから、キミは真剣ガチゼミを開始し――そして、挑む期末テスト。


(……これ真剣ガチゼミでやったところだ!!!)

 そして、返還される答案用紙。

 君は広井さんと答案を見せ合い――


「で、私に何を命令しちゃうのかなぁ」


 君も真剣ガチゼミで最高の青春を!


【始めよう、真剣ガチゼミ END】

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