第5話

 悲鳴が上がった。

 机に向かっていた博士は溜息をつき、助手の部屋に入る。

「どうした、助手君」

 暗がりの中に博士を見付けると、助手は顔を上げた。

「は、博士……」

 その左手首からは、黒い液体が流れ出ている。

「これまた、今回は派手にやったねぇ」

 博士は、うずくまる助手の傍らに座る。

 助手は震える手で博士に縋りつき、取り乱した様子で声を絞り出す。

「嫌だ……嫌だ、死にたくない……っ」

「大丈夫だよ助手君、私が居るからね」

 博士は優しく、助手の頭を撫でる。

「大丈夫、大丈夫だよ」

 同じ言葉を繰り返し聞かせていると、助手は段々落ち着いてきた。

「すみません、博士……」

「気にする事はない。さ、手当をしようか」

「はい……」

 博士は、助手を手当するための道具を持ってくる。

 傷口を塞がれている間、助手はぼーっとそれを見ていた。

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