夢日記

新木稟陽

感動物語


 片田舎。両サイドを民家に挟まれた、片側一車線。道はそれなりに広く、トラックも普通に通れるくらい。道の真ん中は生け垣で隔てられていた。

 たぶん、両親との温泉旅行かなんかの途中の散歩。その生け垣の中に、ティッシュ箱より一回り小さいくらいの箱が二つ落ちていた。僕と父親は何気なくそれを手に取る。


『爆発します。離れてください』


 同時、脳内に声が響く。なんとかベンジャーズのなんとかアンマンに出てきそうなサポート人工知能みたいな声。

 ヤバイ! と思って父を見ると、彼は既に解除にあたっていた。


「間に合わないよ! 走って!」


 僕と母は走った。父も解除を諦め、すぐに走り出す。

 二十メートルほど離れたとき、二つの箱は爆発した。規模は大したことない。しかし火が出るタイプだったらしく、それは生け垣に燃え移って瞬く間に延焼した。

 僕は近くの民家に駆け込み、ドアを叩いた。住民は困惑しつつも、すぐに出てくる。


「すみません、火事です! これ、借りてもいいですか!」


 おそらく猫よけ用だろう、3分の1ほど水の入った状態で置かれていた大五郎のペットボトルを掲げる。


「あ、はいどうぞ!」


 母が消防に連絡すると同時、僕と父はペットボトルに水を詰める。そうしている間にここの同居人らしき人達が集まり、事情を説明する。

 水を詰め終わり、いざ表へ出ると。


「……あら」


 近隣住民が続々と消火活動にあたり、火は既に殆どが消し止められていた。


 なんか、いいな。


 そう思って、その様子を撮影しようとスマホを手に取ると同時、これが夢であることに気付く。

 夢じゃあ、撮っても残らないじゃん。

 なんだか少し、残念だった。

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