第27話 双狼
「あんな村、焼くまでもなかったな」
黒狼は隣を歩く白狼に言った。
「黒狼、そんな軽口を叩くな。必要だから焼いたまでだ。生き残りがいたらどうする」
白狼は黒狼をいさめる。
普段から他人を下に見る発言は白狼にとってストレスであった。
「そんなのいるわけねぇじゃん。だって俺らがやったんだぜ。誰一人として生きてるわけねぇじゃん」
黒狼は楽しげに笑いながら言った。
口元にある血はヌルっとした質感を残しながら地面へと滴り落ちる。
「おまえは昔からそうだ。その油断が命取りになる。情報ではあの村にはかなりの刀使いがいたはずだ。それがあの中にいたとは考えにくい」
「考えすぎだって白狼は。俺らが強すぎるからいても気づかなかったんだよ。俺らより強いのは紫黒さまぐらいだ」
黒狼は白狼の考えと逆の考えを言った。
「だといいんだがな」
白狼は周囲を警戒しながら言った。
自らについた血の匂いが少しだけ鼻を通り抜ける。
「そうだ!鳳仙花も主力部隊が紫黒さま一人にやられて、壊滅的なダメージを負ったって聞くし。このまま全部潰しに行こうぜ」
黒狼はそう言いながら片手に持ったナイフを回して遊ぶ。
「勝手に動くなと紫黒さまに言われているだろう。それに鳳仙花は黒の月に唯一対抗している組織だ。そんなに甘くはない」
白狼は厳しい口調で黒狼に言葉を放つ。
「なんだよ。つまんねぇな。白狼はそう言うところがお堅いんだよな」
黒狼は少しいじけたように言った。
「おまえは軽く考えすぎなんだ。もっと周りを……?」
白狼は動きを止めた。と同時に黒狼も歩みを止めた。
「へぇーいい匂いだ。白狼、いい狩りが出来そうじゃねぇか」
黒狼は鼻をぴくぴくと動かす。
血に染まった強者の匂い。
「あぁ、そうだな……全員戦闘態勢に入れ!奇襲に備えろ」
隊列を組み直す部下たちは迅速な対応を見せる。
「さぁ俺たちを楽しませてくれよ」
黒狼は不気味な笑みを浮かべた。
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