雨の中の図書室で

ザーザー

昼から降り始めた雨は、

放課後になっても止む気配は、無く降り注いでいる。


「………雨ですね」


「………うん」


今日は、図書当番の為

図書室の受付に花園さんと共に座っていた。


「ほら声出して!!」


「「「はい!!」」」


図書室の外から室内練習をしている学生の

声が聞こえる。


「頑張ってますね」


「…うん」


本を読みながら花園さんは、返事をする。


(しっかし暇だな〜)


降り注いでいる雨のせいだろうか

いつも勉強している人や友達と雑談を楽しんでいる人達が今日は、居ない。


(花園さん何読んでいるんだろう?)


チラッと隣の花園さんが読んでいる本を見る。


「あっ………好きです」


「………うん………ふぇ!?っ!!」


「あっ!?」


勢いよくこちらに振り向いた花園さんが

その勢いのまま椅子から転げ落ちる。


「大丈夫ですか!?」


「……痛い…はっ!!……見た?」


床に転げ落ちた花園さんが

スカートを押さえて顔を赤らめこちらを見る。


「えっ?…いや花園さんが

 大変な時に見ませんよ」


そう言って、手を差し出す

まったく侵害だ俺がそんな変態だと…


「……大変じゃなければ見るんだね」


俺は、顔を背ける。

花園さんは、俺をジトーと見ながら

差し出した手を掴み立ち上がる。


「いっいや…そっそれより」


「話逸らそうとしてる」


考えを読まれたがそのまま話を続ける。


「花園さん勢いよく倒れましたけど

 何かあったんですか?」


「…は?」


花園さんの目から光が消え

見るからに不機嫌になるのがわかる。


「…わからないの?」


「えっええと……虫が出たとか?」


「違う…そうじゃなくて

 …その…好きって」


「好き?…あぁ花園さんが読んでる本

 前読んだ事があって好きだったな〜て」


「なっ!?……ふん!!」


ふん!ふん!と言う声の後

俺の足の脛を蹴り始める。

その姿が可愛くて仕方ない。


「痛いです花園さん

 どうしたんですか突然」


まぁ本当は、痛くはないのだが…

それにしても本当にどうしたのだろうか?


「……紛らわしい」


「何が?」


「知らない!!」


そう言って、花園さんは椅子に座り再び

本を開いた。


「本…逆ですよ」


「!?」


花園さんは、ばばばと本を元に戻して、

本を読み始めた。


「あの?」


呼びかけるが返答がない

うーん機嫌が直るまでちょっと離れるか。

それにしてもテンションの高い花園さんも

可愛いかったな。


「花園さん?俺、返却された本を本棚に戻してきますね」


幸紀は、そう言い離れようとするが

後ろから服を掴まれる。


「ん?どうしました」


「まだ本が少ないからいい

 …だから大人しく隣に座って」


「えっでも」


「座って」


「はい…」


「うん」


幸紀は、彼女が本気で怒っているわけじゃない事がわかり大人しく椅子に座る。


「………」


「………」


そして、今さっきの騒動がなかったかの様に

落ち着いた静かさが戻ってくる。


外を見ると相変わらず雨が降り注ぎ

止む気配がない。


「…雨ですね」


「…うん」







「面白いの見ちゃった⭐︎

 …今日の所はやめよっか」

「うん…残念だけどそうしよう」


そう言って図書室の外にあった

生徒の影が消えたのだった。

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