第一話 彼女との接点

「ん〜きもい」


「ぐっ…」


親友の賢治けんじの強烈な一言が幸紀に襲い掛かる。


花園さんに会ってから数日

俺の異変に気づいた賢治から

事情を聞かれてせっかくだからと

賢治に相談していた。


「…そうかな?」


「いやそうだろう…

 二人もそう思うだろ」


賢治が隣でご飯を食べていた

黒と白のギャルこと一色いっしき姉妹に話しかける。


「うん、きもいかな?」

「私なら悲鳴だして助け呼ぶね」


「そんなに!?」


「「そんなに」」


「おっおう…そっそうか…

 というか話を聞いてたんだね」


「そりゃ面白そうだし」

「ね〜」


と姉妹は笑っていた。

しかしまさかそんなにもキモいと

言われるとは思わず幸紀は、肩を落とす。


「そりゃ教室で本読んでて、

 気づいたら無言の男子がドアから

 こちらをジーと

 見てくるんだぜキモいだろ」


「きも〜い」

「そしてこわ〜い」


「うっ」


「それにその後の行動もね〜」

「あり得ないよね〜」


「………」


幸紀は、棘のある言葉に耐えられず

机に顔を埋める。


そんな姿を見て賢治は、

くっくっくと笑う。


「しかし幸紀が一目惚れとは、

 予想してなかったぜ」


「…悪かったな」


「いいや悪くないとても面白いぜ

 お前と友達でよかったと今しみじみと思った」


「俺はお前と友達なのを後悔してるよ」


ん?そうか?

と楽しそうに賢治は笑う。


「それで俺は、どうすればいい」


「しらね」


「ハァ!?賢治お前!!

 何の為にここまで話したと思ってんだ」


幸紀が大声で怒る。

相談に乗ってくれると言うから

恥を偲んで話したと言うのに…


当然その大きな声に話しを聞いてない他のクラスメイトがなんだ喧嘩か?とこちらを見る。


「おいそんなに怒るなって、

 あっ大丈夫大丈夫だから」


そう言って大丈夫だと

賢治が他のクラスメイトに伝える。


「今のは、賢治が悪いよ」

「そうよ最低〜」


「うっわかったすまなかった

 ちゃんと相談のるからさ機嫌なおせって」


一色姉妹の責める声に押され

賢治は、俺に謝り考え出す。


「ん〜どうするか…か…

 まず俺がその花園さん?の事

 知らないから具体的なアドバイス

 出来ないんだよな二人は、その子知ってる?」


「知ってるよ花園秋菜はなぞのあきなちゃん

 ちっちゃくて可愛い子だよね」

「性格は、大人しくて文化系の子だよ」


「花園…秋菜…さん」


「後は…確かイラスト同好会に所属してて」

「図書委員だったね、

 だから昼休みは図書室に行けば会えるかもね」


ガタッ

「まてまてまて

 落ち着け、立ち上がるな、そして座れ」


幸紀の奇行に一色姉妹は、

くすくす笑う。


「うわ…完璧に脳が焼かれてやがる

 しっかりしろ幸紀

 そのままじゃ彼氏云々の前に

 不審者扱いだぞ」


「そっそうだよな……ふぅごめん」


幸紀は、深呼吸を何回か行い

正気を取り戻す。


「よし、落ち着いたな

 それじゃまず幸紀がすることは

 接点を作ることだ」


「接点?昼休みに図書室に行って

 会話するとかじゃダメなのか?」


「お前は、それで仲良くできるほどの

 コミニュケーション能力あるのか?」


「……無い」


「だよな…だからッ」


ガラッ

突然教室のドアが開く

何だ?とそちらを見ると担任が入ってくる。

いつもは、昼休みに来ることなどないのだが何かあったんだろうか。


「あ〜すまん報告があってな

 先日停学処分になった二人だが

 退学することになった」


「あっやっぱり今どき暴力事件起こしたらね」

「予想した通りね」


「これで一月期で5人退学か」


「あぁそうだな」


そう話していると担任が話しを続ける。


「それでな、決めなきゃいけない事ができた」


「当番の振り分けですか?」


「あぁそれは、後から調整が入る事が決まっている」


「「「えぇ〜」」」


教室に非難の声が響く何故ならそれは、

調整つまり当番が増えると言う事だからだ。


「仕方ないだろ、我々は命を育てているのだからそれより、お前たちに決めてもらいたいのは、委員会だ」


「委員会?…確か一人は、保健委員でもう一人が図書委員でしたっけ」


「ああそうだ特に図書委員は、

 1人もいないからな絶対必要だ」


「…図書委員」


「と言う事で誰かやりたい奴はいるか?」


シーンと教室が静まりかえる。

誰だってやりたがらないだろう

何故ならクラス全員何かしらの委員に、

所属しており兼任になる事になるのだから。


「困ったな今日中に決めないといけないんだけどな……ん?柿崎どうした」


担任が俺が手を上げてるのに気づく。


「先生俺がやりましょうか?」


「いやお前は、今でも学級委員と農業クラブ

 の二つを兼業してるじゃないか」


「おっおい幸紀正気か?」


賢治がボソッと小声で問いかけてくる。


「あぁ賢治が言ったんだろ

 接点をつくれって」


「えっ?お前まさかその為に?」


賢治が信じられないものを見るような目で見てくる。


「先生俺は、大丈夫です」


「ん〜だがな…他にやりたい奴はいないのか」


難色を示す担任だったが他に誰もやりたい人間が出ず

結局俺が図書委員になる事に決まった。


「…よし!!」


「お前……やっぱりキモいよ」


「えっ私は、こう言うとこ好きだな〜」

「私も〜」



「…マジかよ」




✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎


「それで貴方が新しい図書委員?」


「はいそうなります」


幸紀は、放課後さっそく図書館に向かい

担当の先生と司書さんに挨拶に向かう。


「あれ?でも貴方他にも委員会してなかった?」


「はい農業クラブと学級委員をしています」


「えぇ!?大丈夫なの?

 図書委員って図書室の当番もあるのよ?」


「大丈夫です。農業クラブは、

 ほとんど活動してませんし

 学級委員の活動は、

 他のクラスメイトも手伝ってくれますから」


幸紀は、胸をドンと叩き大丈夫とアピールする。


「そう…部活の方は?」


「自分は、部活に入ってませんので大丈夫です。」


「そう…大丈夫でしょうか?」


先生と司書さんは、不安そうに見つめ合って話し合っていたがやがて渋々だが了解する。


「わかったわ、ただしキツいと思ったら

 相談してねそしたらこちらも考えるから」


「分かりましたそれで当番は、いつから?」


「本当なら、今日なんだけど…」


「わかりました頑張ります」


「ほっ本当にいいの?」


「はい!!」


「そっそう」


二人は、幸紀の気合いに少し引いたが

気を取り直し図書当番の仕事を教える。


「…と言う事で昼休みと放課後に

 当番して貰うわ

 もちろん毎日とかじゃないから安心して」


「はい分かりました」


幸紀は、当番表を受け取り中を見る

どうやら当番は、一週間に一度ぐらいの間隔らしい。


そうやって当番表を見ていると

ある名前が目に入る。


「花園…秋菜さん…」


「ん?ああ花園さんね

 貴方は、その子とパートナーになるわね」


「本当ですか!?」


「えっえぇ…「こんにちは」

 …あっちょうどよかった

 こっちに来てくれる?」


図書室に入ってきた女子生徒を司書さんが

呼ぶ。


「はい?なんで……君は…」


司書さんに呼ばれて来た女子生徒は、

花園秋菜さんだった。


花園さんは、あの日から数日経っても可愛い

トテトテ歩く姿も不思議そうにこちらを見る

顔も存在全て可愛らしい。


幸紀は、高鳴る胸を抑えるのに必死だ。


「花園さん、こちら新しく図書委員に入った柿崎くん」


「よっよろしくお願いします」


「あっ…はい」


「ふふそれでね、貴女と当番のパートナーに

 なるからよければ今から彼に仕事内容を

 教えてくれるかしら?」


「私がですか?」


「えぇお願い」


「…わかりました、えっと」


「幸紀です」


「…柿崎くんそれじゃこっちに来て」


「あっ…はい」


幸紀は、花園に連れられ仕事内容を教わりに向かった。


「…青春ね」


「青春ですね」

    

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