『バタフライ・キング Butterfly KING 』

松藤 保麻(マツフジ ヤスマ)

第1話  始まりの時が来た!

 音や明るさや感触や臭いも感じる意識の中で目を覚ます!そんな夢を子供の頃から幾度も繰り返し特殊な能力として無くなった物を見つけ出す力や未来に起こる事が他の人より画像イメージとして浮かんでくる力や相手や人が考えている心を見抜く力など、その残像はイメージとして残されていた。

 29歳で結婚をして家族が出来ると私的な事への繋がりを閉鎖し、一心不乱に仕事に100%以上の精力を注ぎ家事や家族サービスも疎かににして来た時期を経過して40代半ばを過ぎてサラリーマン人生も後半に突入となる。

 この時期には余りその特殊能力を意識して使う事や改めてこの力を何かを活かす事などは考えなくなり、忘れていたのかもしれない。

 管理職を上り詰め事業部Topとなると全国の店舗や会合や会議へ参加する事が多くなっていた。

 関東エリアから時には北海道や沖縄、海外までの遠方へ移動する為に飛行機や新幹線やその他の電車・バスなどの移動中や待ち時間を利用して出来るだげ仕事をこなしていた。

 なぜならば2008年に日本で発売されたApple社の2代目の「iPhone 3G」から販売され、今まで出来なかった事が何処でもいつでも出来る様になったからだ。

 この頃から夢の話や頭に浮かんだイメージをスマートフォンのメモページへ日記の様に書き残す事を始めていた。

 過去にも嫌な思いや大変な事態をいくつも乗り越えて来ていましたが社会人となり過去最大の試練と対峙し、この数年間新たな事へのチャレンジがスタートした頃から繰り返される夢の中で起こる出来事!何かが起こるプロローグ。

 真っ暗なスクリーンに突如として現れる眩いばかりの星の輝きに似た光の粒が何かに追われる様に中心部から広がり、その直後に胸が苦しくなる赤黒い暗黒と人々の叫び声を感じさせる光と共にその中心部から爆発が起こり、体が高い場所から垂直に落下し、真っ暗な闇へと吸い込まれる状態で意識が戻る映像がイメージとして繰り返されていた。


  幼少期から心が清らかで常識を重んじる祖父とその血を引き仲間の大切さを知っている父と社交的で我慢強い精神力を持つ母に育てられ、様々な経験をして来た事により今の自分が確立された。

それが昔っから正義感が強く悪事を許せない!それに身体を張って立ち向かう人格形勢でここまでの人生を送って来た。

 25年間命懸けで勤めて来た会社を辞めるキッカケも悪事を許す事が出来ず、その事実を摘発して、これ以上心を痛めているお客様や従業員を増やして行く事は先代から引き継いだ会社を仕組まれ追いやられてしまった会長の意思に反する行為を黙って見ていられる筈がなかった。

だが周りの仲間を巻き込む訳には行かず、1人で立ち向かって行った正義の力は悪意の幹部達に様々なトラップと慕ってついて来てくれた仲間や信頼を勝ち取っていた従業員への脅しによる反旗には傷を負わせる事は出来ずにこれ以上仲間や部下達を巻き込む事は出来ず限界となり、やはり善意の単独戦は通用せずに敗れてしまった。

役員を辞め、会社を退職して自身で会社を立ち上げて正しいと信じた仕事を始めてみたものの、老舗企業の業界への圧力は想像を超える痛手となり、あれだけ共に取り組んで来たサポート企業担当者達もあの会社からの威圧的脅しにより従うしかなかったのだと分かっていた。

それから1年と半年様々な企業や業界の方達と協議を繰り返し取り組んで来たが業界大手の反乱分子を許さず潰す動きは続き思う様には行かなかった。

家族と一緒に暮らす為に、立ち上げた事業を継続出来る経営者に出会う事がキッカケで、52歳でやっと転職出来て入社した会社。

入社して初めての週末。そして月曜日が祭日の3連休予定だった。

金曜日14時過ぎに社長から連絡が入り「土日は用事があるのか?」と聞かれ、「特にありません 。」と答えると「別会社の仕事だけど頼むな !」と言われて断れる訳がなかった。翌朝は夜中雨が降った事に気付かずに洗濯物がビショビショになったまま物干し竿にぶら下がっていた。

サッとシャワーを浴びてから、早めに出かけて外で朝食にありつく事を考えて愛車に乗り込もうとした時、アスファルトの地面は雨水が溜まりいつもより真っ黒な色に染まっていた。

一瞬何かが動いた様に見えた!水面に波紋が広がり中心部に羽を広げ微かに動いている黒っぽいシマシマのアゲハ蝶が息絶え絶えに羽を動かそうとしていた。

こんな所にいたら自分の車で踏み潰す事になると瞬時に考え蝶の前に右手の人差し指を出した。

すると最後の力を振り絞って指を登り始めた!

「頑張れ頑張れ!」と唱えながらそれを見守っていた。

人差し指の指紋の中心部まで登り切るとスルッと左側に落下してしまった。

もう一度チャレンジさせてみたが上手く登れない様だったので仕方なく羽をつかむ事にした。

羽を掴む為に近づいて行くと、小さい頃から昆虫が好きで知識もあった私には羽の形や柄が少し変わっていると思いながら右手の親指と人差し指でそっと掴みにいった。

ところが羽をバタつかせながらなかなか掴まさせない様にしている。

その時、耳を疑ってしまったが確かに聴こえて来た。

「私に触れないで!とても危険だから !」と声でも音でもないものが頭の中へ届いた!「テレパシー!」まさか!と疑わず暴れる羽を何とか掴み少し離れたカミさんが育てている花壇の重なり合う葉の2段目に陽射しを避ける様にちょこんと乗せた。

まだ今朝方まで降っていた雨粒がキラキラと輝いて綺麗だった。それが落ちないかどうかを確認してから車に乗り込んだ。

それから近くのコンビニエンスストアーに立ち寄り朝食の為のサンドウィッチを買った。いつもならお決まりのハムとキュウリのを選ぶところだが、昨日目にしたテレビ番組で特集していたこのコンビニのこだわりのタマゴサンドだ!

完成間際に半熟卵を入れて再度混ぜ込む事で更に味と舌触りが良くなると説明していた。工場で取材を行っていたタレント達の試食がたまらなく美味しそうだった。

あの作り方と試食を思い出して心は決まったハズだった。

でも最後に手にしたのはタマゴとハムとレタスのミックスサンドだった。

決め手はハムを諦めたく無かったのではなくみずみずしくシャキシャキ感をレタスに感じたからである。

飲み物は最近はもっぱらエコロジーを考え自宅のウォーターサーバーからペットボトルに注いでくる富士山の水である。車に乗り込み音楽を掛けて気分はドライブにでも出かける感じで走り出した。

あと5分程度で高速道路入口付近に到着する。その前に食事を済ませてしまおうと走る車の中でミックスサンドの封を開け3つある左側のパンに手を付けて掴み出した。

「あっ!」と先程の光景が一瞬頭をよぎった。

「私に触れないで!とても危険だから !」

大分疲れが溜まってきているんだ!と自分を納得させパクリと一口。

その後はしばらく忘れていた。

高速道路入口手前で鳥が車のすぐ目の前を横切って飛んで行った。

何だか分からないがクチバシの形や爪の形まで鮮明に脳裏に残っていた。

ハンドルを握り運転に集中している筈なのに、なぜこんな事が起こるのかと一瞬考えたが気のせいに違いないと思う事にした。 

高速道路に入り走り出すといつもと変わらない光景に鼻歌交じりでしばらく車を走らせていた。

渋滞も無くスムーズに進んでいたが後方からパッシングのフラッシュがバックミラー越しに目に入って来た。

「ブゥッブッー!ブゥッブッー!ブゥッブッー!」とクラクションも激しく鳴らされた。「随分と強引な運転をするトラックだなぁ〜!」と思い「巻き込まれるのはごめんだ!」と車線を左に移し道を開けた。

するとそのトラックも左側に移動し僕の車にぶつかる位の車間距離で左右に動きながら煽って来るのでした。

頭に来るのを抑えてハザ-ドランプを点滅させて、『お先にどうぞ!』と今度はゆっくりと右側の車線に車を移動した。

それでもまだひつこく着いて来るトラックに流石に我慢が限界となり、覚悟を決めてウインカーを左に付けた。

そしてゆっくりと路側帯に車を停めた。

そのトラックも同じ様に車を寄せて停った。内心どんな凄い親父が降りて来るのかとドキドキしながらバックミラーを覗き込んでいた。

ドアが空き細い足が地面を叩く様に飛び降りた。なんだ!ヤサ男だなぁと思い無視して車から降りずにいた。

サイドミラー越しにそいつが近づいて来た。運転席側のドアを軽くトントンと叩かれて!あれ!と拍子抜けして見上げるとそこには若くて可愛げな女性が立って何かを話している。

ドアを開けられない様にロックしていたのを忘れてしまいガチャガチャとしながらドアを開けた。

『何かしま・・・・』言いかけた時、いきなり車のドアを開けて中を覗き込んで来た。中のハンドルやギヤーシフト、それと計器類を一通り見てから。

私が『何ですか?』と言うとこちらを振り向き『オジサン!珍しい車のってるね!』と言うのです。

私も何を言われているのか分からず『普通車ですよ!ホンダのインスパイアですよ!』

不思議そうな顔をして首を捻り『ウソはダメだよ!こっちはちゃんと見てるんだから!ドライブレコーダーを見てみる!』 

何の事だか全く分からず呼ばれるまま彼女のトラックに乗り込んだ!ドライブレコーダーのスイッチを付けてスマホを取り出した。

ブルートゥースで見れるんだ!と思い感心していると『見て!見て!』と私の顔の前にスマートフォンを近づけた。

『そんなに近いと見えないよ!』とその手を振り払った。

足元に落ちてしまい画面が裏返しになり、声だけが聞こえて来た。

『ちょっと!待ってよ!何だよあの車!』『やっぱり!浮いてるよ!って言うか飛んでるよ!やっべーよ!』

足下のスマホを拾うともう間近で私の車が煽られていた。

『オジサンの車飛んでたんだよ!さっき!』『大人をからかわないでくれよ!』と言うと『じゃあ!もう一回再生するからよく見てよ!』ともう一度そのスマホを渡されて画面を見たその時、彼女の電話に連絡が入って画像が途切れてしまった。

と同時くらいで私の腕時計のアラームが鳴った。

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