猫の朝

 早朝からやかましい音が耳に入ってきた。体が重くて起き上がる気になれないので横たわったまま何の音かを考えてみる。


 バリバリと威勢が良い。我が家の猫がダンボールで爪を研いでいる時にこういうのが聞こえる。そうか、奴が早起きして爪研ぎをしているのか。


 納得し、うるさいなあと思いながら寝続けることにした。まだ早いから二度寝三度寝と重ねる余裕がある。


 そうして夢うつつにバリバリを聞いているうちふと気づいた。


 しかし、俺のこの寝室に爪研ぎ用のダンボールは置いていない。隣の部屋には置いてある。音の出所は、近い。この部屋の窓の方だ。


 ハッと気づいて起き上がり、首をのばして窓辺を見た。


 猫が一心不乱に窓のところの障子紙を破っている。


 俺は不承不承に寝床を出て、ボロボロになった障子をあけてやった。すると奴は満足そうに明け方の空を見始めた。そんなに朝日を見たかったのか。


 今日は晴れか。俺の方はもう少し寝よう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る