第2話 高1の春ー。

高1の春。

今日は入学式の日。

わたしの名前は、

椎名 結乃(しいな ゆいの)。


全身紺色のブレザーで、

白いシャツに細いリボンを結んだ制服を

身に包んで、学校に向かう。


本当は、セーラー制服を着たかったんだけどなぁ。


ちなみに、

わたしは生まれつきに耳が不自由だ。


今日から通う学校はろう学校という、

耳の聞こえない人が集まる学校なので、

補聴器という、少しでも聞こえることができる機械を耳にはめて生活をしている。


幼稚部の時から地元にあったろう学校に通ってたけど、中学部までしかなく、市外にあるろう学校の高等部に進学することになった。

中学部まで学年でわたししかいなくて、

たまに1人が来たりいなかったりで、

ほとんど1人だったけど、、


ろう学校は普通の学校と違って

かなり人数も少ない。


だけど、なんとわたしを含めて7人の同級生がいるみたい。ほぼ、1人だったわたしにはとても嬉しかった。

だけど、普通の学校から入学してきた子もいて、手話で会話することが出来ない子もいた。そのうちの2人は、幼稚、小学、中学部の時、

ちょっとの間に一緒だった子もいた。


結乃

「澄佳、久しぶり!前髪を切ったんだね!」


わたしが彼女に声をかけたのは、

紀和 澄佳(きわ すみか)。


中3の時、

転入してきて一緒に学校生活を送ってきた子。


澄佳

「うん!切ったよ!入学式、緊張する!出席番号が1番で、1番前だから手が震えるよ〜…」

と、2人で他愛のないほのぼのと会話をしてた。


しばらくすると、

先生が入ってきた。


先生「入学おめでとうございます。今から式だから身だしなみをちゃんとしとけよ!」


わたしと澄佳は、お互いの身だしなみを見る。


結乃「リボンが曲がってるよ。」と、

澄佳の制服のリボンを直す。


澄佳「ありがと!結乃のは大丈夫!」


先生は、案内で私たちを連れて

体育館の前に、出席番号の順に並んだ私たち。


わたしは6番だった。


体育館の入口ドアから少し覗いて見ると、

暗そうな空間だった。


窓には、全てカーテンで囲まれてた。


まず、中学部に入学する子が入っていき、

次は私たちの番で、澄佳が先に入っていき…。


結乃「待って、思ってたより全然暗いやん!見づらいやん!うわぁ…人がいっぱいおる…」

と思った。

緊張にやられて、足を上げるのに重く感じて、

ガクガクしながらも、歩いた。


50mくらいの先に、席がある。

そこに着いて先生に案内で、

「こちらです。」と説明してもらった。

7番の人が来て、座ろうと思ってたら、

まだだった…。


私たちの次に、専攻科の入学もあったのだ。

すっかり忘れてた…。


揃うまでずっと立って待つ私たち。


結乃「うーん…早く座りたいなぁ…すごく寒い…緊張もやばい〜…」と心の中でつぶした。


やっと揃って先生が

「座って下さい。」と指示があって、

私たちは座った。


結乃「はぁ〜…やっと!緊張は死んだ!危なかったなぁ〜…よし。」と、

自分を落ち着かせた。


先生「ただいま今から入学式が始めます。全員、起立。」

隣に、手話通訳をする先生を見てて、

わたしは慌てながらも、すぐ起立した。


礼をして、また座った。


先生「えっと。今から入学する者の名前を呼びますので、呼ばれた方は返事をし、その場で立って下さい。それでは、まず中学部に入学する者は…。」


名前を呼ばれる、返事するなど事前に全く聞いてなくて、声を出すの…?と、

心の中で焦ったわたし。


先生「以上で、1名。次は高等部の本科に入学する者は、1番 紀和 澄佳。」

澄佳はすぐ返事をし、その場で立った。


結乃「す、すごい…。緊張してる…。と言ってたのに、堂々といけたやん…。」と唖然した。


先生「4番…5番…」


結乃「え。もう次?!やばい!待って、準備が…」と、ソワソワしてるうちに、

先生「6番、椎名 結乃。」


慌てながら、枯れた声で

「は!は!は〜…」と懸命に返事しつつも、


ドッドシーーーーーッッツ!!


「い、いたぁ…」


え。今のは何が起こった?!


返事をし、立とうとしたら

緊張しすぎて腰が抜けてしまって転けたのだ。


恥ずかしい!!!!と思いながらも、

すぐ、立った。


先生「以上の7名。次は高等部の専攻科に入学する者は…」

と、何もなかったように流された。


先生「今から10分間、休憩です。」


みんなはお手洗いやリラックスとかしてて、

自分もリラックスした。

さっきのことは、小さな事で大丈夫!誰も言ってこないし。と自分に思い込んだ。


隣にいる同級生の優衣がわたしを呼んだ。


結乃「な、何?」


優衣「後ろの人が呼んでるよ。」


結乃「ん、後ろの人って誰がいるの?」


優衣「先輩たちだよ。ここの在校生だよ。」


後ろを振り向いたら、

わたしを呼んでる女の人は手を振っていた。


わたしより2つ上の先輩で

七瀬 詩帆(ななせ しほ)。


中学の時、陸上部の混合練習で一緒に練習をしたこともあって、遊んだ事もあって、前から知り合っていた。

愛嬌があって優しくてアニメが大好きな人。


七瀬「結乃。久しぶり!ってか、転けたの?後ろだったから目立ってて、私たちは笑ってしまったんよ!」と、笑ってた。


結乃「あ''ぁー…見られてしまった…オワタ…」

とさらに恥ずかしくなった。

入学式の日に、めでたい日だったはずが、

わたしとしては最悪な日だった。



休憩が終わって、始業式が始まって

終わって、ある先生が私たちの所に来た。


先生「私はあなたたちの担任になる鈴木といいます。宜しくお願いします。さて、今から教室まで案内しますので、来てください。」


鈴木先生は男性の方で、

体格は大きくて鍛えて、背が大きい。

体育の先生。


私たちは鈴木先生の後ろに並んで、

案内して貰いながら教室へ移動。

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