ただそばに居られるだけで

 密かに恋慕っていた相手から誘われ、一緒にプロレス部を設立しようと奮闘する、とある男子高校生のお話。

 いわゆるボーイズラブ的な青春ものの現代ドラマです。
 明かすことのできない秘めた恋心。
 つまりはゴリゴリの片想いストーリーで、とにかく切ないながらも青春を謳歌しているところが素敵。

 ふたりっきりの部活動(正しくはそれを設立するための活動)。
 思いは打ち明けられなくても、ただ一緒に何かをしているだけで幸せな日々。キラキラしてるのに切ない……。
 ただそこから加速していくのが後半なのですけれど、この先はそこに触れるためご注意ください。



〈 この先ネタバレ注意! 〉

 結局、部活動の設立は叶わなず、でもなにより驚いたのは後半入ってすぐの展開。

 高校時代のことは完全に思い出となって、でも胸のどこかに燻り続ける。
 つまり本当に「叶わなかったあの日の思い出」的な意味での〝初恋〟の物語だったこと。

 胸を揺さぶられます。恋に限らずとも、誰しも似たような経験はありそうというか、「遠いあの日に置き去りにしてきた何か」を思い出させられました。
 とても切なく甘酸っぱい、恋とその思い出の物語でした。