第二話 『さあ、魔女の家!』


「わぁ、凄いわスティ! 私達、今空を飛んでるのね!」


 辺りには一面の夜景が広がっている。

 たとえ異世界に来ても、空から見る夜景というのは綺麗なものだ。

 そこら中から、ランタンや馬車の明りが見え隠れしているのが、妙に日常的な感覚を覚える。


「そりゃ、飛行魔法を使えば誰だって出来るよ。それに、前にも一回だけ一緒に飛んだろ、っと。」


 簡単に飛行魔法なんて言うが、そんな簡単に空を飛べるのなら誰も馬車なんて使わない。

 スティは飛行魔法を巧みに操り、空中で半回転をして仰向けの状態で私の方を向いた。

 そして、いっそ有名な芸術家が作ったと言われても納得できる程整った唇で、スティは私に質問をした。


「ディア、勢いであのパーティから抜け出してきたのは良いものの、今後については考えてたりするの?」


 こんな状況だというのにスティの目からは、私を責めるとかそういった感情が全然読み取れない。

 その無表情からは何考えているのかは読み取れないけど、私と共に王宮を逃げ出してくれたのは、きっと善意からだきじゃあ無いと思う。


「うん、バッチシだよ。大船に乗ったつもりでいて!」


 前世の私は、手本の様な社畜人生を歩んでいた。

 だが、それと同じくらい、いやそれ以上に廃ゲーマーだったのだ。

 帰宅した瞬間には既に、テレビの前でコントローラーを片手に臨戦態勢に入る様な人種だった。

 そして、大体は寝落ちするというのがオチだ。

 経営シュミレーションもの、バトルもの、恋愛もの、その全てをやり込んできた。

 その結果、社会に出てからも私は実年齢=彼氏募集歴という、悲惨な結果となってしまったのは、とんでもない代償だったけれども。

 だがその代償と引き換えに、この世界の知識を手に入れることが出来たと考えればば収支はプラス!


「見掛け倒しな船じゃないことを願うよ。」


 そう言って、スティは茶化してきた。

 本当にスティは、どんな表情でも絵になるなぁ。

 王宮や学園でも、スティはモテモテだったし。

 というか、原作ではあのパーティの時にはスティと王子、あと公爵家の跡取りであるエアロ・サーミッスハーミットの隣に居たはずなんだけど。

 なんでスティが未だにハーミットと距離を置いて、私と居るのかが謎だ。

 転生した時点から、原作と違う流れに突入しちゃってるんですけど!?


「で、まずは何処に行く? 流石に王都へは戻れないだろうし、かと言って何の準備も無しに見知らぬ土地に行くことも難しい。僕の屋敷とかかな?」

「いや、行き先は決まってるの。」


 今、私の脳内にはこの世界での私、ヘブンズ・ディアーとしての記憶が少しずつ入り込んで来ている状態だ。

 転生したばかりだから、まだ完全にディアとしての記憶が思い出せていない。

 それでも、今さっきこのディアとしての少ない記憶の中で、ある一つの思い出が脳に入って来た。


「ねえスティ、昔私たちがダイヤードの町に行ったのを覚えてる?」

「ま、まあ覚えてるけど? 確か、僕らが五歳や六歳くらいの時にヘブンズ家とフィング家が合同で行ったんだっけ。」

「そう、それよ。」

「で、それがどうしたの?」


 原作では、第二部の中盤で登場した町だ。

 そして以外なことに、私とスティも幼い頃に一度訪れたことのある場所だ。

 小さい頃、私とスティの家はお互いの家の親睦を深める為に、とある片田舎へ二泊三日の狩りをしに出掛けたことがあった。

 とは言っても、そんな大層なことをした訳では無く、普通に狩りをして帰っただし、スティにとっては、そんなに印象深い出来事は無かっただろう。

 しかし、原作通りの流れで行くならばダイヤードの町は絶対に行くべきだ。

 だって、そこには魔女の家があるのだから。


「ちょっとその町の近くで、回収したいものがあるの。なんなら、そこに住むことだって出来るわ。」

「了解、何のことかは分からないけど、ディアがそう言うならとりあえず行ってみるよ。」

「ええ、レッツゴートゥー魔女の家よ!」


 こうして私とスティは、ダイヤードの町へと向かったのだった。



~あとがき~


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