第24話 【森の花の守護者】フロール・ド・マトゥ(A Flor-do-Mato)

 フロール・ド・マトゥは、主にパライバ州の森に現れた妖怪で、マノエールという名のポルトガル人とジュサアラーというインディオの娘との間に生まれたハーフの娘であり、10歳程度の女の子の姿をしているという。インディオの少女らしく、裸か薄着でいることが多い。彼女の髪は長く金髪で、瞳は青い。動物をいやす能力を持っているが、異常なまでのタバコ好きであったそうだ。聞くところによると次のような話がある。


 あるとき、森のハンターが獲物と間違えて彼女を撃ち殺した。彼女は埋葬まいそうされたが、しばらくして彼女の墓の周りに多くの花が咲き、それとともに彼女は復活した。この奇跡きせきは森の精霊せいれい加護かごによってもたらされたと森の族長ぞくちょうは考えた。そして、彼女を「森の花」という意味であるフロール・ド・マトゥと呼ぶようになった。

 こんなことがあったからであろうか、彼女はハンターを見ると、動物の声を真似て驚かせ、道に迷わせる。あるいは、狩猟犬しゅりょうけんを驚かせて追い払ったりする。彼女はハンターが身を引くまで何度でも悪戯いたずらをするが、タバコをくれたハンターのことは見逃すのだという。

 タバコ好きな彼女は、しばしば人を捕まえては無事に帰すことと引き換えにタバコをねだる。捕らえた者がタバコを持っていない場合には、その家族あてに手紙を書き、パイプやタバコの葉を要求する。すなわち、身代金ならぬ身代タバコ目的の誘拐ゆうかいである。


 ニコチン中毒で誘拐ゆうかい犯という不良少女であるものの、もともとは心が優しく、森の動物には大変好かれている。辛いトウガラシが嫌いで、甘いマンゴーが大好きという可愛らしい面を持っているので憎めない。

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