第3話 【変幻自在の森の精】アニャンガ(A Anhangá)

 この妖怪はアマゾンの森にんでいる精霊せいれいである。月が明るく輝き、夜の森を青く照らす夜に現れる。別名アニャグエラ (Anhangüera) という。

 アニャンガは姿を自在に変化させることができ、例えば鳥、蝙蝠こうもりねずみ、アルマジロ、牛、ピラルクーなどの様々な動物に変身するという。なかでも、最もよく知られた姿は白い鹿である。その白鹿はくしかは、赤く光る目を持ち、ひたいには十字の斑紋はんもんがある。そして角は毛でおおわれているという。

 「アニャンガは、森の木々や動物(特に幼い動物やその母)を保護し、猛獣もうじゅうに襲われた人々を助ける」と、アマゾンのインディオ達は考えている。一方で、「アニャンガを見ると熱、又は狂気きょうきにとらわれる」と信じている。そのため、インディオ達は、アニャンガを森の神や精霊せいれいとして畏怖いふする。

 ところで、キリスト教徒の伝承でんしょうのなかには、頭部に十字架じゅうじかが浮かんだ白い鹿の話がある。ローマの軍人エウスタキオは白い鹿の幻を見て、キリスト教に改宗かいしゅうした。また、フランスの聖フベルトゥスも同様の鹿を目撃したといわれている。全く交流のなかったヨーロッパとアマゾンの文化の中に、似たような姿をした精霊せいれいがいるというのは不思議である。

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