第27話 キリストとしての聖徳太子(^^)ノ
蘇我氏と物部氏の対立は、丁未ていびの乱で物部宗本家が滅亡する事で終わりを告げた。
蘇我氏は大化の改新で行われた一連の改革の先駆けであった。
しかし、乙巳の変によって、蘇我入鹿が中臣鎌足や中大兄皇子らによって、飛鳥板蓋宮あすかいたぶきのみやの大極殿にて殺害されると、蘇我宗本家は滅亡した。
こうして天智天皇となった中大兄皇子や、天智天皇から藤原の姓を賜った中臣鎌足は、蘇我氏の事業を引き継ぎ、大化の改新によって天皇を中心とした中央集権的な国家を目指した。
天照大神を日本の総氏神とし、元号を大化と定める事で日本を一つ束ね、唐からの独立を主張したと言う。
夫は、大化の改新によって、日本人は単一民族としての道を歩み始めたのではないか、と言った。
そう考えると、秦の始皇帝の命により日本へ渡来を果たした徐福は、天智天皇や藤原鎌足にとって、とても煙たい存在になってしまったんだと思うよ。
特に藤原氏は、徐福と共に海を渡って来た人々の末裔な訳だから、諸豪族にしてみたら、お前ら、偉大な祖神になんちゅう事をしてくれとんねん、と、そう思われたんじゃないかな。
まあ、今更、日本のルーツはイスラエルだと言っても日本人は困惑するだけだろうけどさ。
でも、世界の様々な場所からやって来た民族が寄せ集まって出来たのが日本と言う国であり、日本人と言う国民だと思うんだ。
日本神道の特殊性は、八百万やおよろずの神と言って、万物に神が宿ると言う思想なんだと思う。
この考え方は、極端な言い方をすれば、日本人は自分や他人を、神だと考えても構わないと言う免罪符のようなものだよね。
これは、イスラムやヨーロッパの国では、とても考えられない思想だと思うんだ。
だからこそ、日本人は、世界中の、どの民族とも分け隔てなく接する事が出来るかも知れないし、どの民族とも近しい親族だって本気で主張する事も出来るかも知れない。
夫が珍しく熱く語るので、私は、ちょっと驚いてしまった。
しばらくして、夫は、何か思い付いたようで、聖徳太子ってさ、秦氏や蘇我氏の背景にあるキリストの投影なんだろうけど、キリストとするなら、絶対に欠けている部分があるよね、と言った。
聖徳太子がメシアとして欠けている部分。
何だろう?
私は、何が欠けているの、と聞くと夫は、救世主メシアって、スケープゴートと言うのかな。
必ず生け贄として捧げられてないといけないって言う暗黙のルールみたいなものがあると思うんだ。
仮に、聖徳太子がキリストだとしたら、聖徳太子は必ず殺害されてないとならないよね、と言うので、私は、まあ、そうだね、と答えた。
夫は、竹取物語は、乙巳の変に対して怒ってる人が書いた物語だよね。
その乙巳の変で、中大兄皇子と中臣鎌足に殺害された人って誰だっけ?と聞くので、私は、蘇我入鹿、と答えた。
すると、夫は、じゃあ聖徳太子の正体は、蘇我入鹿って事になるよね、と言った。
私が、え、聖徳太子の一族は、蘇我入鹿によって滅ぼされたんじゃないの、と聞くと、入鹿と太子が同一人物であるなら、自分が原因で、一族が滅んだって言う詭弁は成り立つんじゃないかな、と夫は答えた。
聖徳太子が建立した法隆寺って、聖徳太子の一族が滅亡した後、火災で消失したものを再建したと言われてるんだけど、誰が再建したのかが分かっていないんだ。
日本書紀にも、この法隆寺再建の記載が一切ないから、どうやら編纂の中心にいた藤原不比等は、そこに触れたくなかった事情があったと推測出来るよね。
つまり、法隆寺は藤原氏が再建したんだと思う。
再建した法隆寺には、夢殿って言う八角形の御堂があるんだけど、そこには聖徳太子の像と伝わる救世観音ぐぜかんのん像があって、でもそれは秘仏で、今まで誰も見た事が無かったんだよ。
ところが、明治になって、その封印をお雇い外国人のフェノロサが解いたんだよね、と夫が言った。
アーネストフェノロサは、日本美術の大恩人だ。
その聖徳太子と伝わる救世観音ぐぜかんのん像は、ミイラのように全身に麻布が巻き付けてあって、光背こうはいの釘が頭に直接打ち付けてある異常な姿だったと言うよ。
これ、怖いよね。
こんなもの、怨霊封じの呪詛で間違いないよ。
聖徳太子は実在しないって説があるけど、普通に考えて、実在しない人の祟りを、こんなにも恐れる筈ないし、そもそも、祟りって、祟られる相手に非が無いと起こり難いものだよね。
だとしたら、なんで、聖徳太子と無関係な藤原氏が太子の怨霊に悩まされるのかを考えてみれば、自ずと、聖徳太子の正体は、蘇我入鹿だって事が分かると思うんだ、と夫が言った言葉を受けて、私は思わず、聖徳太子が蘇我入鹿だって根拠があるの?と聞いてしまった。
それに対し夫は、根拠なんてないよ。
ただ、聖徳太子がキリストであるなら、それは絶対に蘇我入鹿でないといけないって話しなだけで、と言ったのを、私はただ黙って聞いていた。
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