第14話
今日は大河を昼までに飛行場に送って行かないといけないので、少し早めに夏美さんに食事を作って貰って、みんなで美味しく食べてから七星の旅館を出た。
また、夏美さんに急に車を借りたので今日は少し怒っていたが、なんだかんだいつも貸してくれるのは夏美さんの優しさなのだろうか。
「日向も空港行くよな?」
「う、うん」
今日朝起きて日向に聞くと、昨日のような楽しそうな笑顔ではなくどこか暗い顔で返事をしてきた。
だからそんな日向を見て俺は考えた。
もしかして、こいつ大河と離れるのが寂しいのか?と……。
だとしたら、これはチャンスでは!?
俺は日向のいない大河とふたりの部屋に戻ってから、大河にその考えを元に伝えた。
「なあ、今日空港で別れる前にちゃんと日向には自分の気持ち言えよ」
「いぇっ!?きょ、今日!?」
「ああ、今日だ」
「でも」
どうやら大河には勇気がないらしいので、俺はわざとらしく言う。
「そしたら、次会えるのはいつか分からねえな~~日向。ちゃんと学校へ通うかも不明だし」
「へ!?嘘、まじで……そうか……」
どうやら、大河はその言葉で決心がついたらしい。
悩む顔の目がめちゃくちゃ真剣だった。
空港へ向かっている間、車の中は何故か会話がなかった。昨日はふたりで楽しそうにしていたというのに、どうしちまったんだ。
日向は寂しいのだろうか?大河は緊張しているのか?お互い顔も合わせずに固まっているから俺もどう言葉を投げていいのか困る。
結局空港には沈黙が続いたまま着いてしまった。
駐車場に車を止めて宮崎空港内へ三人で入ると、あと三十分後に出発する飛行機の為にここでお別れをするように二人に伝える。
「大河は先にもう搭乗ゲートに入っておいた方がいい。分からなければ、お姉さんが場所とか席とか全部教えてくれるから頼れ。あと日向。ちゃんとさよならするんだぞ。そんな顔で下向いてないで笑えよ、別に今日が最後じゃないだろ学校に行けば会えるし」
「うん……でも」
「そ、そうだぞ、日向。学校に来れば俺が、今度は、ま、守ってやるから……もう、酷いこと言わないし……」
「うん……でも……」
「なんか言えよ日向。最後だろ」
最後だというのに日向はまだ下を向いている。まあ、学校に行けば会えるのだが、日向がこれからどうするかはまだ俺にはわからないし。
すると、日向は大河に聞いた。
「学校行ったら絶対いる?」
その言葉に大河が驚きながら、ちゃんと答える。
「お、おう」
「また、冒険してくれる?」
「お、おう、じゃ、じゃあ今度は俺がリーダーだ……!」
すると、その言葉に気が障ったのだろうか。日向はさっきまで沈黙して沈んでいた顔なんかどっかに吹っ飛ばすようにいつもの強気で叫んだ。
「はあ!?嫌だ!日向がリーダーがいいの!!リーダーは日向だあああ!!」
「おいおいおい、もう時間ないぞ。急に喧嘩してないでちゃんとサヨナラしろ」
まあ、ちゃんと通常運転になったらしい。日向はいつもの日向にランクアップしてしまった。
「なんで日向リーダーじゃないの?そこは日向でしょおおおおお!!!」
すると、大河は言った。
「じゃ、じゃあ……もし次冒険する時は……日向は姫で、俺は勇者だ!ど、どうだ!」
しかし、残念ながら大河が勇気を持って伝えた言葉は日向を余計怒らせたらしい。
「姫って……日向弱くないし!リーダーの座は譲らないもん!!」
「そ、そうか。うーーん。もう仕方ない。わかった。なら約束する!だから絶対学校来てくれ!またな!」
「や、約束だから!学校行くかはわかんないけど。……き、………き、気を付けてね!」
「おう、じゃあまたな」
こうして大河は帰っていった。
おいおいおい、ストレートに言わないと日向にはわからないだろ?
でも、そんなにすぐ言えるもんじゃないか。
どうやら、嫌い嫌いは好きの内らしい。
その好きが実る日にはまだまだ遠そうだが、きっと大河ならいつか日向のことを……うーーんできるだろうか。まあ、俺は応援してやるくらいしか出来なけれど。見守ってやろう。可愛い恋だからな。
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