第17話 軍将

「今日は丸々1日庭の散歩なので、メイド3名は1日休暇だ。」


「殿下最高です。」

「よっ、家臣思い。」

「あの~殿下お耳に入れたいことが。」


「なんだメイドC。」

「ちゃんと名前覚えて下さいよ。最近侍女筆頭のネール様が宰相閣下と妙に親しいんです。特に殿下が出かける時は必ず2人で何か話してます。」


なるほどね、娼館ギルドの件かな。何か向こうから仕掛けて来るかもしれないわね。


「情報ありがとう、え~っとメイドCじゃくて名前は・・・・。」

「チャンリンです!」


   ♦


「娼館ギルドの方はどうだ、ローズ。」

「なんとか王都の娼婦全員の登録とランクづけは終わったわ。今は最低料金と給与の話し合い中ね。」


一部まだ反発はあるようだけど、比較的順調だわね。次は娼館ギルドと病院の建設だわ。資金は十分だけど、問題は敷地だわ。貴族の別宅でも買い取ろうかしら?


カンカンカン。

カンカンカン。


「火事だ~。」

「冒険者ギルドの近くが燃えてるぞ。」


「黒龍のメンバー4名は消火と救助に迎え。M男はローズ達の警護をしろ。筋肉アホはこの建物の入口を見張れ。誰も中に入れるなよ、いいな。」

「殿下は?」

「この建物の屋上から様子を見て、風魔法を使って指揮を執る。」


昼間のメイドCの情報通りになったわね。冒険者ギルド近くの火災は陽動でしょう。本当の狙いは王太子の私とギルド長のローズだわね。やっぱり来たわ、いかにも工作員って感じの黒装束が10名程だけとは舐められたもんね。


「筋肉アホ、10名程の襲撃者が正面から来るぞ。M男の部下と協力して応戦しろ。腕の見せ所だぞ。」

「応っ!」


シュバ。シュバ。シュバ。

カン。カン。カン。


短剣使いだわね。

あのリーダーらしき男が投げて来たわね。狙いもかなり正確だわ、ただの傭兵や冒険者じゃないわね。


「ほう、今のを防ぎますか。この国の王太子は魔法特化と聞いていたのですが、少々違ったようですな。」

「その言い方は帝国の軍人だな。誰の手引きだ。」

「どうせ死ぬんですから聞いてもムダになるだけです。自己紹介が遅れました。私は帝国12軍将が1人、ツヴェルフと申します。殿下の御命を頂戴致します。」


フッ。

シュタッ。

カキン。


私と同じスピード重視の戦い方をする男ね。でもスピードなら私が上よ。


「身体強化魔法!」

「風魔法、嵐脚!」


シュッ、ガキン。

シュババ、ガキン。

シュン、ガキン。


こいつ何本短剣隠し持ってるのよ。まだ投げるつもり?


シュッ。

「同じことを何回も。」

バ~~~~ン。

なっ、短剣を払おうとしたら爆発した!


「油断しましたね殿下。今投げた短剣には爆発魔法が付与されてたんですよ。私の二つ名は爆剣のツヴェルフです。綺麗な顔に傷がつきましたね。」


シュッ、バ~~ン。

シュッ、バ~~ン。


「爆剣ばかりに気を取られて防御がおろそかになってますよ、殿下。」

ザクッ。

クッ、まだよ。左腕をちょっとかすっただけだわ。


「殿下もスピード重視の様ですが、次の爆剣10本と私のタガーの両方を防ぐのは無理でしょう。」


シュシュシュシュシュ。

シュシュシュシュシュ。


仕方がないわ、アレを使うわよ。

「風魔法、空歩!」


さすがに爆剣は上空にまで来ないわね。両足の空歩で空中に足場を作りながら、あいつの側面に回り込んでやるわよ。


「消えた?」

「消えてないぞ、こっちだ!」


ザシュッ。


「お見事です殿下、まさか空中を自由自在に動けるとは・・。しかしこの勝負、私の勝ちです、私のタガーで傷をつけられた者は・・・・・・・。」


ドサッ。


やったわ、帝国の軍将に勝ったわ。私はもっと強くなれる、もっと・・あれ?体が動かないわよ。大精霊の加護で私には毒や麻痺は無効のはずなのに・・・意識が朦朧としてき・・・・・・。


ドサッ。


「殿下~~~~~~~。」


   ♦


何も見えないわ。意識ははっきりしてきたけど、体が思うように動かせない。何かの力で縛られているような気分ね。声もとぎれとぎれにしか聞こえないわ。誰かいるのかしら。


「殿下~。」

「フューちゃん。」



「・・様、・・の治療をよろし・お願い・・ます。」

「しょう・・・わね。」


女、誰の声だ?


「何よこの・・は。ちょっと体も・・ってるじゃない。どういうこと?」

「じゃあ・魔法を・・るわ。」


体に何かが入ってくる。心地いいな、湖に浮かんでゆらゆらと漂っているような気分だ。眠い、また意識が・・・


パチリ。


「殿下が目を覚ましました。」

「殿下が起きました。」

「殿下が生きてます。」


「なんだ、メイドAメイドBメイドCじゃないか。どうした?」


「まだ私たちの名前を覚えてないんですか。」

「メイドA、私の名前はチャンヌ。」

「メイドB、私の名前はチャカーガ。」

「メイドC、私の名前はチャンリン。」


「「「チャンチャカチャン3姉妹の三つ子ちゃんで~す。」」」


えっ、この子達三つ子だったの。

区別がつかないはずだわ、だから名前も覚えられないのよ。

それでこの状態は何?

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