第4章 夜の帝王~元悪役令嬢

第15話 娼館ギルド

「御前会議に参加の諸君、ぼくは王太子として王都東地区の再開発を進めてたいと思う。異論はないだろうか。」


思ったより情報収集と計画立案に時間がかかったわ。この会議の出席者である四公爵・宰相・外務大臣・財務大臣・騎士団長への根回しも大変だったのよ。でも過半数は味方に引き込んだわ。M男とローズに弱みを調べさせただけだけどね。


「王都の改革は大事業です。なぜ王太子殿下が自らがそのような事業に参画されようと思うのか、その理由をお聞かせ願えませんか?」


出たわねクソメガネの父親、宰相バイス。こいつは曲者よ、叩いても埃も何も出て来なったわ。まあ、王都の運営は宰相の専権事項だから面白くはないでしょうね。


「宰相は男だよな。」

「それが何か?」


「それが理由だ。この御前会議には男性しかいない。故に男性の視点からしか物事を考えたり、問題点を解決したりすることができないのだ。王都東地区には娼館や酒場などの女性が働く場所も多い。ぼくは女性でも住みやすい王都を作りたいんだよ。」


「殿下も男性では?」

「そうだ。しかし、ぼくは今回の婚約破棄という失態を犯し、母上やたくさんの女性にお叱りをいただいてね。自分の視野の狭さを実感したよ。これからは女性に自分から歩み寄っていきたいんだ。」


「殿下、失敗から学ぶ。王太子としてご立派ですぞ。」


ナイスアシスト、クマゴロウ。猫獣人のタマちゃんを紹介してあげるわよ。宰相は後はどう出る?


「具体的な計画を教えていただきたいのですが。」

「それではこちらの資料をご覧いただこうか。まだ現段階では、青写真に過ぎないのだが参考程度にはなるだろう。」


うっそで~す。精緻なプランはもう立ててあるわよ。陛下の採択を得て突っ走るだけよ。詳しい情報を宰相に出すと横槍が入るからナイショ。


「これは!」

フフフ、驚くのも無理ないわ。貴族の既得権益を侵害する内容だもの。


「フューネル、私からもそなたに聞きたい。お前の目指す王都東地区の再開発の根本理念はなんだ。」


「はい父上。ぼくの目指す未来の王都、いえガイル王国は貴族・平民・女性などのすべての臣民が、その能力によって正しく登用される実力主義の国です。それがぼくの根本理念です。」


「ようかろう、裁可を言い渡す。王都東地区再開発においては王太子フューネルに全権を任せる。ただし、期間は1年間だ。資金も王太子への拠出金で賄え、以上だ。」


キマシタワー。

凡庸さ故に家臣を動かすことに長けた陛下らしい裁可のやり方だわね。金は出せんから自分の力でやれということ、要は丸投げね。やってやろうじゃない。


それにしても宰相の悔しそうな顔が愉快だわ。これからは、グヌヌメガネと呼んであげるわ。もっとグヌヌメガネにしてあげるわ。


「話は変わるが宰相殿、貴殿の子息は今どうしているのだ?」


グヌヌ。


「愚息のアレクは、婚約破棄事件の後、再教育のため帝国へ留学させました。」


知ってますわよ、クソメガネのアレクと出歯亀義弟のクレス、おまけにエロボケのアンナは3人揃って帝国学院へお払い箱。はあ~、愉快すぎて笑うわ。



「やりましたな殿下、お見事でした。あの宰相の顔は愉快でしたな。しかし、レイアーズ嬢の父親であるベルン公爵が何も言わなかったのは意外でしたな。」


いやいや、会議中めっちゃ睨まれたし。入れ替わりを知らないとはいえ、ちょっと心にくるものがあったわ。でもお父様もダメね、平民との間に隠し子を作るなんて。ちょっと脅したらダンマリだもの。


「援護すまなかったなクマゴロウ、今晩ぼくに付き合ってもらうぞ。」

「本当ですか!喜んでお供します。」


   ♦


「3週間ぶりだなローズ、予約した通り今日はM男とクマゴロウとぼくの3名だ。」

「フューちゃん遅いわよ、わたしずっと待ってたのよ。M男さんはエリザベスでクマゴロウさんはタマでいいのよね。」


「殿下!タ・タマですか。ウォ~、愚息のギルと勝負だ。この戦いは負けられん。」

「エリザベスお嬢様。」


「さあぼくたちも行こうか。ぼくの愛しい人、ローズ。」

「いや~ん、恥ずかしいわ。」


ポポポッ。

モジモジ。


ローズの顔が真っ赤になって、恋する乙女みたいで可愛いんだけど・・・。最初の時とキャラ変わってない?3週間ぶりだからね、今夜はハッスルしちゃうわよ~。


「ア~~~ッ。」

「ア~~~ッ。」

「イィィ~ィ。」

「そこは、らめぇ~。」


張り切った割に、本気のローズにやられてしまったじゃない。今夜は完敗だわ。ローズの甘えっぷりも尋常じゃなかったわ。入れ替わって1か月以上経つけど、だんだん男の体にも違和感がなくなってきたわね。


「ローズ、明日高級宿屋の『黒龍の隠れ家』に王都の娼館長全員を集めて娼館ギルドの設立を宣言する。娼館長の取りまとめは頼んだぞ。」

「任せて、娼館ギルドはフューちゃんのものよ。だからねぇ~、もう1回!」


「ア~~~ッ。」


今夜のローズは凄かったわ。もっと私も鍛えないと太刀打ちできないわ。さて、クマゴロウとM男の様子を見て王城に戻らないとね。


「にゃ~。」

お前もか、クマゴロウ。筋肉アホと事後の様子が同じじゃない。M男は・・・。

満面の笑みだわね、暗殺者の笑顔は怖いわ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る