第27話 焦る気持ち


2022年4月26日


 彼とのやり取りから3週間が経とうとする頃、もう彼からは連絡がこないんじゃないかと私は少し焦りを感じ、先生に相談する事にした。とは言っても彼は既婚者。彼との未来はないし、奥さんから奪うつもりもない。ただ、このままでは何故か済ませられないという執念に似たものを自分の中で感じていた。


「先生、もうすぐ3週間経ちますが、彼から連絡はくるでしょうか?」

「彼からの動きが全くないとなると。。

こちらからアクション入れましょうか。」

「はい。今日で3週間何もないですし。。」

「とりあえず、彼にこちらの変化も見せていきたいので、最近こんなことを始めて楽しんでるというようなLINEを入れましょうか。嘘でもいいので。」

「嘘ですか?」

 私は彼のように嘘をつき続ける自信がない。きっとどこかでバレてしまう。趣味の話となると尚更そう思った。彼が少し興味を持つような、そして私の好きな事と言えば、

「本当の事で、京都にこの間行ったよ~、とかはどうでしょうか?

仕事で関わりのある先生方が京都に住んでいる人が多かったり、個展を開いていたり、打ち合わせなど、京都に行く用事を作ることは多くあるので、今度ここに行くけど、近場でおすすめのランチとかないかな?的なことはどうでしょうか?」

「そうですね、いいと思いますよ!」

「承知しました、作成してみます。」


 先生のやり取りの後、彼にLINEを送った。3週間ぶりではあったが、返信は早かった。

「先週京都行ってきたよ~。

今度高台寺行くねんけど、オススメのお店とかあれば教えて欲しい~。」

「観光地ド真ん中やしたくさんあると思うよ。前に2人で行った湯豆腐やさんの清水店も近いよ。先週はどこ行ったん?」

「先週はJR京都の駅前で仕事の打ち合わせしたよ。高台寺の方にもあるんや、湯豆腐やさん。めっちゃ美味しかったし、いいね!」

「打合せ?デートやなくて?」

「仕事の打ち合わせ!

コロナに慣れてきて、最近は京都での打ち合わせも増えてきた!」

「そうなんや。仕事増えてきて良かったね。」

「ありがとー!」

「また時間が合えばお茶でもしよね。」

「うん、またお茶できたらいいね!

湯豆腐もう一度食べたいから行ってくるよ。高台寺も仕事やからあまりゆっくりできないけどねー。」

「そやねぇ。」

 短くてそっけなく感じたその返事に私は少し焦りを感じた。やっぱり、復縁なんて無理なんじゃないかと。。


2022年5月1日


 5月に入り、彼からの連絡はまだない。お茶でもしよねと言ってくれたのに、追いLINEがこない。ほんの少し期待していたのに。。

 私は落ち着かない気分で、先生に相談LINEを送った。

「彼は以前、私にかき氷を食べに連れて行ってあげたいと言っていたんです。こちらから誘うのはどうなんでしょう?」しかし先生からは、

「今無理に誘わず、彼から誘ってくるようにしましょう!」と返事が返ってきて、更に、

「既読スルーのままで、再度こちらからのLINEまたは彼からの追いLINEをもらいましょう!」と付け加えてきた。やっぱり送っちゃダメか。。

「先生、今日は京都に行ってきました。。この季節なので湯豆腐には行ってません。彼がお互い落ち着いたらご飯行こう。とか、

また時間が合えばお茶でもしよ。とか、

具体的に話が進まないのは何故なんですか???」

「彼の中で、気持ちがまだ固まっていないからです。自分をさらけ出したことによって、会うことのハードルが勝手に上がってる状態で、それが彼の中ではまだ越えられない状態になってるんです。」

「そうなんですね。。」

 そうか。そういう事なんだ。彼は自分が後ろめたい事をしてしまって、自分で会う事のハードルを上げてしまっているんだ。。

 

 だからと言って彼から追いLINEがくるとは思えなかったのだが、先生の予想通り、その晩彼から追いLINEがきた。

「先生!!京都観光楽しめた?って彼から追いLINEがきました!」

「おお!とりあえず、彼のおすすめの店に行った体にしましょうか!」


 私はすぐさま彼に返事を送った。

「観光客凄かったから湯豆腐混んでたけど早めに行ってて無事に食べれたよ~。」

「そうなんや。良かった良かった。」

「行きたかった栗のスイーツのお店があったんやけど、予約待ちやったから諦めて、またリベンジやわ。」

「栗のスイーツなんかあるんや。」

「これが食べたくて!」

 私はこのメッセージと一緒にその栗のスイーツの写真も送った。

「甘そう。。凄い人やったんやろね。」

 彼はあまり甘い物が好きではないからスイーツには興味を示さない。でも、また京都に行くというのを遠回しに伝えたつもりだ。


 LINEがこなくて落ち着かなかったり、LINEがきて喜んだり、一喜一憂している自分がそこにはいた。彼に会いたい。もう3ヵ月以上彼に会っていないのだから。

 

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