第6話 回想編③彼氏

2021年5月


 5月11日、出会いから3ヵ月を経て付き合うことになった。それまで何度も付き合う話は出たが、まだ会ったこともないし、会った時にお互いイメージが違っていたら?という不安と迷いがあって決心がつかなかった。しかし彼の、「もう愛してしまってる。」「付き合ってしまえば、ヤリモクじゃない事が証明される。」などの言葉に押され、私は落ちた。

 付き合っているという気持ちが入るとウキウキする感情も出てきた。彼氏ができたんだ。私が「彼氏できた。嬉しい。」と言うと、彼も「僕も彼女できた。嬉しい。」と言ってくれた。そして、これから楽しみだという期待と、彼がいてくれる事で病気への不安が薄らぎ、安心感に変わっていくのも感じた。


 彼の性の部分はというと、私に対する要求はエスカレートしていった。「胸の写真送ってよ」「性器の写真見たい」など、「僕は好きな人のでしか感じないから、今までの彼女にもワガママ聞いてもらってきた。」と話し、私もなるべく要求に応じていた。私はおかずなのか?と感じた事もあった。性欲は強くて、常に会話にも性がついてくる事が多かった。世間話をする事もあったが、たいして長くは続かない。彼が興味をなくしてしまうのだ。薬を飲んでいるし、欲望のままなのがよくわかった。身体の不調を訴える事も多かった。こっちは辛すぎて口に出してしまうといった感じだ。


 私は5月上旬に退院し、月末の26日には彼と会う約束をしていたのだが、合併症を併発し、また再入院していた。彼もまたその頃、美容室で気を失って倒れた。高熱が出たことでコロナを疑ったが、次の日病院で腎盂腎炎だと診断され、そのまま1週間入院した。私たちは、結局月末に会うことができなくなった。


2021年6月


 6月も私は入退院を繰り返した。結局3回の入院を経験し、彼との約束の2回目も流れてしまった。6月10日に約束していたのだが、8日に再入院となっていた。最後の入院はひと月にも及んだ。入院中は彼が話し相手になってくれて支えられていたと思う。彼がいなかったら、入院中もっと鬱々していたのではないだろうか。7月の退院が決まってからは、「どこで会う?」「どこに行く?」「早く愛し合いたい」などの話で盛り上がった。初めて会う日にホテルに行くのは抵抗があったが、もう付き合って2ヵ月が経過していたし、彼も手っ取り早く距離を近づけたいと言ってきた。それでも「お茶ぐらいしてからホテルに行こう」と言ったり、「いや、もう我慢できない」と言ったり。同じような話を何度も繰り返した。


 色々と迷った末、大阪で会う事になった。彼のお店では雑貨も取り扱っており、そろそろ買い出しに行くからと、大阪市内の卸のお店に連れていくよ、と誘ってくれた。子どもが好きな雑貨も多く取り扱っており、「子どもさんにどうかな?」と言ってくれたので、有難く行かせてもらうことにした。そして、その近辺でホテルも探してくれる事になった。


 いよいよ、彼と初めての対面の日が決まり、緊張と不安が入り混じったような気持ちでいっぱいになっていた。

 

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