覚えてる?

 寝静まった家。外ではしとしと雨が降っていて、眠るには最適の環境が整えられていた。


 それなのに、一向に夢の世界へ行けない。俺の目は修学旅行前日の比じゃないレベルで冴え冴えだ。


 いつも一人のこの空間に、未希ちゃんがいる。


 もちろん、同じベッドで一緒に寝ているわけじゃない。未希ちゃんは床に敷かれた布団

で横になっている。


 どうしてこんなことに……などと嘆く資格は受け入れた俺にはない。




『実はその、メンタル的に一人だと辛いと言いますか、寂しさで潰れちゃいそうと言いますか、誰かと一緒にいたくて…………年下のハルくんにこんなお願いするのもなんなんだけど……その、さ…………』





『しばらくの間――一緒に寝てくれない、かな』





 あんな頼まれ方をされちゃ断るに断れないだろ。


 ……いや違うな。渋々受け入れた感じを見せたがそれはただの照れ隠し。断るという選択肢は端からなかった。



『――み、未希ちゃん……なに、してるんだよぉ』


『しぃー。下にいるパパとママに聞こえちゃうでしょ? ハルくん』


『でも……だって』


『大丈夫。ハルくんが心配することはなにもないの。ちょっと、私の興味に付き合ってもらうだけ…………ほら、手をここに――』


『『――――――――――――』』



 拷問のように眠れない時間が続く中、過ちの記憶が脳内で何度も再生される。理性の素晴らしさをここまで痛感したのは人生で初かもしれない。



「……ハルくん、起きてる?」


「――――ッ」



 とうに寝ているのだとばかり思っていた未希ちゃんの話しかけられ、声にならない声が俺の唇から漏れた。


 俺は仰向けの体勢から横に向きを変え、壁を見つめる。



「お、起きてるけど」


「……眠くないの? それとも、眠れない?」


「眠れない」


「そっか、私と同じだ」



 自分もそうだと口にした後、未希ちゃんはクスっと笑った。



「昔はさ、ハルくんとこうして一つの空間で一緒に横になること多かったじゃない?」


「うん」


「あの頃は今みたいに全然寝れないって事なかったよね」


「未希ちゃんと会ってた時って大体は日中遊びまわってたからね。疲れで夜更かしできる体力なんてなかったよ」


「それもそうなんだけどさ。なんかこう、意識しちゃう……みたいな?」


「意識?」


「うん。久しぶりの再会もそうだし、お互い成長してるし……中々ね。ハルくんはそういうの全然ないの? まったく平気?」


「…………………………」



 まったく平気じゃない、意識しまくっている。


 ただ、それを言葉にはしなかった。



「ごめんね。変なこと聞いちゃって」


「別に」



 謝ってきた未希ちゃんに俺は素っ気なく返した。



「「…………………………」」



 室内は再び雨の音に満たされる。


 さっきまで内心ドキドキだったのに、未希ちゃんと言葉を交わす事で不思議と落ち着いてきた。暗闇で顔を合わせていない事もあり、さほど緊張もしていない。



「………ねえ、ハルくんは覚えてる?」


「なにが?」



 だが、その冷静さは次の未希ちゃんの一言で簡単に取り除かれる事になる。



「ハルくんと私で〝ちょっぴりエッチな事〟したのを」







――――――――――――

どうも、深谷花びら大回転です。


★下さい。以上です。


あ、日本ダービーとりました。以上です。


★下さい。以上です。


オートの川口記念に全部もってかれました。以上です。


★下さい。以上です。




わたくしは…………異常です。以上です。

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