昔、一度だけエッチ?をしたことがある従姉。幼馴染の彼女ができた俺の前にその従姉が突然現れて修羅場に

深谷花びら大回転

プロローグ 甘酸っぱい夏の記憶

『――み、未希ちゃん……なに、してるんだよぉ』


『しぃー。下にいるパパとママに聞こえちゃうでしょ? ハルくん』


『でも……だって』


『大丈夫。ハルくんが心配することはなにもないの。ちょっと、私の興味に付き合ってもらうだけ…………ほら、手をここに――』


『『――――――――――――』』


     ***


 梅雨のじめっとした空気にもだいぶ慣れてきた6月の中旬。俺、才迫さいさこ治親はるちかは曇り模様の空の下で昔の記憶を思い出していた。


 それは遠い夏の記憶。俺と従姉以外は誰も知らない危険な記憶。


 この時期になると何故か思い出してしまう。



「――治親ってばどしちゃったの? ボーっと突っ立っちゃって」



 隣から前屈みで俺の顔を覗いてきたのは幼馴染であり、彼女でもある涼森すずもり舞花まいかだ。


 ゆるふわパーマのサイドを耳にかけ、「ん?」とあざとく首を傾ける舞花。くっきり二重の栗色の瞳が間抜け面した俺を映し出している。



「いや、別に。ちょっと考え事してただけだよ」


「いやいや、自分家の前でしますかね普通。考えたい事があるならお家に上がってお風呂に浸かりながらの方がいいよ? ちょうど――ほら」



 背を正した舞花が広げた右手を前にかざした――雨だ。



「降ってきちゃったな。傘は持ってるのか?」


「ううん。ないけど、これくらいなら走って帰れば余裕だから!」


「大丈夫か? すぐに持ってこれるけど」


「いいよいいよ、気にしないで! ――それじゃ治親、また明日ね!」


「お、おう。また明日」



 鞄を頭上に駆けて帰る舞花を見送ってから、俺は家の中に入った。



「おっかえりーハルく~ん! 元気してた? というか私のこと覚えてる?」


「――み、未希……ちゃん?」



 久しぶりの再会、顔を合わせるのはあの夏以来だろうか。玄関を開けた先で待っていたのは、今しがた頭の中で浮かんでいた従姉だった。

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