真相、深層、心理、真理

閉じ込められてからどれくらいの月日が経っただろう。

この部屋にいると不思議と腹が減らない。


最初は出られるかもしれないと言う希望が

あったため、なんとかじっとしていられたが

最近は希望もなくどうにかなりそうだった。

ただ退屈を持て余していた。


そうして遂に煙草を一本取り出してしまった。

空になった煙草の箱をあの日の花瓶のように

乱暴に投げ捨て、先端にライターで火をつける。


少しの背徳感を感じながら煙を吸って

大きく吐いた。

独特の匂いと共に濁った煙が密室の中に広がる。

すると灰色の煙の中にうっすら風景が見えた。


最初はぼやけた色しか見えなかったが、だんだん風景のピントが合ってきた。

そして風景が鮮明に見えた時、

そこには時計を見ながら心配そうな顔をする

お婆ちゃんの姿があった。

今の俺と同じように煙草を吸って煙を吐いている。

しかし、一息ついている様子ではなく

むしろ何かの焦りを隠すかのように煙草を吸っていた。視線を横に移すと俺が割ったあの花瓶。

中には、


一本のガーベラがあった。



男は思わず煙草を指から落として

泣いた。

「あぁ…そう言う事だったのか…。」


落とした煙草で部屋に火がつき、

男と部屋は燃えて消えた。

後悔と夢は燃えて消えた。

ガーベラは燃えて消えた。

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