第3話
日本が戦争に負けて、軍人だった広瀬さんがどうなるのか、おじいちゃん、おばあちゃん、もちろんおばちゃんも、まだ五歳だったお母さんも、みんなが心配した。幸い、広瀬さんは生まれ故郷の九州にもどることができた。広瀬さんから無事を知らせる手紙が届いて、みんなで泣いて喜んだ。
戦争が終ってから、女子専門学校の家政科を卒業していたおばちゃんは中学校の先生になった。戦争中、勤労奉仕のために、学校の授業をほとんど受けられなかった自分が、生徒に何を教えることができるだろうと、おばちゃんは随分悩んだそうだ。でも、おばちゃんは一生懸命勉強して、いい先生になろうとがんばった。
その頃、おばちゃんは家族に内緒で広瀬さんと文通していた。広瀬さんは六人兄妹の末っ子だから、家を継ぐことはできない。一方、おばちゃんは二人姉妹の長女で跡取り娘。だから二人で相談のうえ、広瀬さんはおばちゃんのお婿さんになるため、九州の家を出て、おばちゃんの家から通える仕事を探すことにしてくれた。頭のいい人だったから公務員の試験に一発合格したそうだ。
万全の準備をして、広瀬さんとおばちゃんは、おじいちゃんとおばあちゃんに結婚の許しを求めた。ところが、結婚は認めないとおじいちゃんに言われてしまった。
おばちゃんは目の前が真っ暗になった。
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