マチュアの章・その2 冒険者になってみました

 盗賊の一行に襲われたところを、通りすがりの冒険者に助けて貰ったマチュア。

 色々とこの人達に教えて貰おうと、まずはサイノスの提案ですぐ近くにある『城塞都市カナン』へと徒歩で向かっている所であった。


……


「あのーメレアさん、申し訳ないのですが王国の物価について教えて欲しいのですけれど」


 マチュアはエルフ特有の長い耳をピクピクと動かしつつ、サイノス達のパーティーの紅一点であるメレアという女性魔道士に問いかけていた。


 これから向かう都市がこの世界に来て初めて訪れる街である以上、物価を知ることは必須。

 初期装備でもらった金貨などが一体どれぐらいの価値なのかを知らなくてはならない。


「物価‥‥ですか?」

「え、えっと。私のお世話になっていた村では貨幣なんてほとんど使っていなかったもので。ファナ・スタシア王国の物価というものが判らないものでして」

「あーはいはい。マチュアさんだっけ? 今お金どれぐらいあるの?」


 シーフの少年・フィリアに言われて、マチュアは懐にしまってあった小銭入れを取り出すと、中に入っているお金を取り出して見せた。


──チャリチャリーン

「金貨が12枚と銀貨が122枚、銅貨が10枚、青銅貨が5枚です」


 通貨単位なんて判らないので、色を基準にそう告げる。俺のラノベ知識が、この聞き方でよいと言っているから多分大丈夫だろう。

 ジャラっと小銭を取り出すと、フィリアに見せてみた。


「ヒュ〜。マチュアさん意外とお金持ち。王国だと、家族4人で一ヶ月大体金貨8枚程度。素泊まりの宿一泊で銀貨2枚、ギルド直営の酒場でエールのんで銅貨2から3枚ってとこかな。青銅貨は下町でしかあまり使わないし。ジャガイモを麻袋いっぱい買っても銅貨3枚だよ」


 フィリアの言葉から大体察する。


「銀貨10枚で金貨一枚ですか?」

「そ。銅貨カッパー10枚で銀貨シルバー1枚、銀貨10枚で金貨ゴールド1枚、金貨100枚で白金貨ミスリル1枚だよ」


 ふむふむ、金貨一枚1万円と見た。

 こうなると計算が早い。


「ジャガイモいっぱい…ですか?」

「あ、マチュアさんの村ではジャガイモは取れていなかったのですか? このあたりでは大麦で作るパンや蒸かしたジャガイモなんかが主食ですよ」


 おう、まるで北海道。

 この当たりの気候や風土は、北海道や東北と大差ないのかと予測してみる。


「えーっと、ということは私の所持金だと」

「贅沢しなければ半年は持つよ。カナンに滞在するのなら安心していいと思うよ」


 ほっと一安心するマチュア。

 神様は、初期装備のお金としては、意外と現実的な金額をいれておいてくれた模様。

 ん? まてよ?


(ということは、これが無くなると最悪餓死か。早いところ冒険者ギルドに登録して任務をこなさないといけないのか‥‥)


 本当に現実的すぎる。

 続いて街の文化や風習についても質問してみたが、おおよそどこにでもあるファンタジーゲームの世界と大きくかけ離れたとこはない。さしずめ剣と魔法の中世ヨーロッパというとこであろう。

 ついでに、ここの世界の神様についても簡単に問いかけてみた。

 もちろん怪しまれないように。


「あー、これから向かうカナンの主神のことか?」


 サイノスが横から話しかけてきた。


「え、ええ。私の村では、巡礼修道士さんが来てくれなかったもので。神様についての知識が私はあまりないのですよ」


 これはキツイか? どうだ?


「まあ、エルフの主神は基本【精霊王アウレイオース】だから知らないのも無理はないわ。これから向かう先は【正義の神クルーラー】を主神として祀っているのですよ。戦と冒険の神としても有名ですわね?」

「まあ僕みたいな流浪の民の神様じゃないけれどね」


 メレアの言葉にフィリアが続く。


「フィリアさんはその若さで冒険者になったのですか。大変でしたね?」


 と問いかけてみたが。


──プッ

 と笑われてしまう。


「あ、マチュアさん、僕は【ロリエッタの民】だよ。人間で言うところの15歳ぐらいで外見の年齢が止まってしまう種族。こう見えても22歳のうら若き乙女なんだからね」


 おお、合法ロリ来ました!!

 神様この世界を選んでくれてありがとう。

 って?


「すいません。てっきり男性とばかり」

「こう見えても女性ですよっ!!」


まじまじと顔を近づけてよく見る。

 あ、ボーイッシュな外見だけど、細部の作りはしっかりとした女の子である。


「僕っていうから、つい。ごめんなさい」

「まあ、性格も男みたいなものだから気にしなくていいフベシッ‼︎!」


──スパァァァァン

 笑いながらツッコミを入れているサイノスに、フィリアのハリセンが炸裂する。

 そのハリセンほしいなぁ。

 一体どこから出したんだろう。


「ま、まあ別にいいけれどね」

「まあまあフィリアさん。では話を戻しましょうか」


 ということで、この世界の神様講座をお願いした。


……


 まず、この世界は8人の神【8柱神】によってすべての加護が与えられている。

 4人の魔神と4人の神。

 合わせて8人の神によって、世界すべてが作られているということだ。

 マチュアの【GPSコマンド】に加護を与えてくれているのもその中の一人の女神であり、【秩序の女神ミスティ】と呼ばれている。

 コマンドの詳しい説明に書いてあったから間違いはないだろう。

 なお、マチュアとストームをここに召喚した神はさらにその上、【創造神】に位置すると見て間違いはない。

 最も、メレアさんに創造神について問いかけてみたが、そのような存在はいるとは伝えられているが、名前も伝わっていない。

 つまり創造神によってこの世界は作られ、8人の神はここを統治するように告げられているということか。

 

……


「ファナ・スタシアの主神は【正義の神クルーラー】だ。冒険者に加護を与えてくれる主神でもある」


 サイノスの言葉に二人も頷く。


「サイノスさんたちは冒険者なのですよね?」


 ああ、と返事をすると冒険者についての説明もしてくれた。


 【魂の護符】を冒険者ギルドに持っていって登録を行うと、最初に魂の資質を鑑定される。

 そしてその資質によって、冒険者としてのレベルが確定する。

 大体の人はまずはアイアンクラスからスタート、潜在的に資質があるものはブロンズから始まるのだが、それは極僅かということである。


「噂では、Sクラスよりも上の冒険者クラスが存在するらしい。虹色に輝くそのプレートはSSクラスといって、よく吟遊詩人の伝える物語の中に出てくる英雄と同じぐらいの強さらしい‥‥」


 サイノスが興奮気味にそう告げる。


「え、英雄ですか」

「ああ。結構有名な英雄譚に出てくる主人公は皆、虹色であったらしいからなぁ。俺もそんな英雄にあこがれて、村を出て冒険者になったんだ」


 親指をこちらに立ててそう話すと、さらに話は続いた。


「冒険者というのは、大体が複数名でチームを作るのですよ。お互いの足りないところを補い合ってより難しい依頼に挑む。それが冒険者ですわ」

「まあ、単独ソロで活動している冒険者も僅かにはいるけどね。でもそいつらだって他所のチームに雇われて入ったりしているから、完全に一人っていうわけではないよ」


(あのステータスだと、確実に虹色だろう‥‥女神ミスティ様、なんとかして‥‥俺目立ちたくない)


 心のなかで神に祈る。

 まあ、虹色になったらなったで、その時は開き直るとしよう。


 幾つかの丘陵地域を越えて、ようやく見えてきたのは巨大な城塞。

 高さはゆうに20mはあろう。

 ファンタジー世界でここまで巨大な建造物が構築できるものかと驚いたが、魔法があるのでなんとかなるのだろう。

 マチュアはそう自分に言い聞かせつつ、皆について正門へと歩いていく。

 城塞の周囲は田園風景。

 都市の中の人達が外に出て働いている光景が広がる。

 その風景こそまさにファンタジーの世界。


(くぅぅぅ。3Dや斜め上俯瞰でない、ナマの風景がこれほどまでに綺麗とは)


 まさに感動。

 ふと視線を城塞に移すと、正門では道端に大勢の人々が列をなしている。


「あの列は?」

「あれは街に入るための審査を受けているんだよ。通行許可証があるかどうか、なかったら【魂の護符】を示すことで銀貨3枚で通行手形を発行してもらえる」


 フィリアの説明で一つ疑問。


「【魂の護符】がなかった場合は?」

「当然入れない。ただし、その人物の身元を保証してくれる者がいる場合は通行可能。銀貨2枚でね」


 実に判りやすい説明をありがとうございます。

 そんなこんなで門の横にある受付で手続きを終えると。いよいよファンタジー世界初の街へとやってきた。



  ○ ○ ○ ○ ○



 ファナ・スタシア神聖教会。

 主神は正義の神クルーラー。

 全身を荘厳なフルプレートで覆い、巨大なカイトシールドとハルバードを携えている男神である。

 その神の加護の下、ファナ・スタシア王国は栄華に包まれていた。


 正門からまっすぐ中央に向かって伸びている街道。

 その左右には多くの店が並んでいる。

 それを横目に眺めつつ、中央にある巨大な噴水の向こうにある、これまた巨大な教会へとたどり着いたマチュア達。

 礼拝のためにやってきたのであろう人たちと共に、ゆっくりと中へと入って行く。

 正面奥には巨大な神像。

 その少し手前にある演説を行うための演台の前に、一人の司祭が立っていた。


「ようこそ神聖教会へ。おや、ロード・サイノス。これはまたご機嫌麗しく」


 と、両手を広げて俺たちを迎え入れてくれたのは、ファナ・スタシア神聖教会の責任者であるケビン・スターリング枢機卿。

 壮年のエルフで片眼鏡をはめている、渋い中年という言葉がよく似合う人物である。


「スターリング卿もご機嫌のようですね。本日はこの方に神の祝福を与えていただきたかったのです」


 ケビン枢機卿に跪いてそう告げると、サイノスはゆっくりと立ち上がってマチュアを呼んだ。


「これはこれは‥‥数奇な運命に取り込まれてしまっただん‥‥女性ですね。初めまして。私はケビン・スターリングと申します。この神聖教会の責任者を勤めさせて頂いています」


 と頭を下げるケビン枢機卿。


(今、だん‥‥女性って言ったよな。この人には元の性別がわかるのかな?)


 判っていてそう修正してくれているのなら、助かったという所である。


「はじめまして。私はマチュアと申します。本日はこちらで【魂の護符】を授けて頂くためにやって参りました」


 静かに会釈する。


「これはご丁寧に。ではさっそく始めましょうか。主神に跪いてお祈りを」


 そう奥にある巨大な主神像に向かうように促されたので、そのまま言われるがままに向かうと、静かに祈りを捧げる。


(虹色だけはご勘弁を。魂の修練どころか英雄扱いされてしまう)


 そう静かに‥‥囁くように。魔法の詠唱の如く‥‥祈りを‥‥ついでに念を捧げた。

 と、目の前に透き通った護符が現れる。


「それがあなたの【魂の護符プレート】です。お取りなさい」


 言われるまま手に取る。

 と、それはスッ、と手の中に消えていった。


「祝福はなされました。どうやら貴方には我らが神クルーラーではなく、秩序の女神ミスティの加護が授けられたようですね」


 こちらを向きつつ軽くウィンクして告げるケビン枢機卿。


(あ、枢機卿はお見通しのようですね)


 とホッと一安心。


「へー、ミスティの加護って珍しいよなぁ」

「そうですわね。秩序の神ミスティは、その公平さゆえ何人にも加護は与えないと伝えられていますわ」

「よし、マチュアさん、うちのチームに是非ともフベシッ‼︎」


──スパァァァァァァァァン

 そう話しかけてきたサイノスの後頭部に向かって、フィリアとメレアが巨大なハリセンを叩き込んだ。


「またハリセン?」

「あ、これはマジックアイテムだよ。混乱した対象に心の安らぎを与えるっていう」


 その形は一体何なんだと突っ込みたいので、【鑑定】をこっそり起動。


アイテム名:心の平穏シバクゾオラ

効果   : 対象者の心に静寂を与える。

加護付与神:秩序の女神ミスティ


 あーなるほど。

 ちなみに【鑑定】のスキル持ちはこの世界でもかなり珍しいらしい。

 各王国や都市の商人ギルドには2~3名はいるらしいが、冒険者でこれを持つものは極わずか。

 そのためか、どのチームでも【鑑定】のスキル持ちは優遇されているらしい。


「ハリセンは西の王国に行けば誰でも買えるマジックアイテムだよ。登録するとその人の【ギルドカード】か【魂の護符プレート】に統合されるから、念じればいつでも出せるし」


 というフィリアの説明に、なるほどと頷く俺。

 俺の【モードチェンジ】の簡易版っていう感じなのかな。


「ハッ!! 俺は一体何を」


 そして咄嗟に、正気に戻るサイノス。


「いつもの悪いクセだ」

「そうですわ。まだマチュアさんは冒険者の資質を持っているかどうかもわからないのですよ?」


 と二人に窘められてサイノスは小さくなる。


「うん、いい連携ですね。それでは冒険者ギルドとやらに向かいたいのですが」


 と3人に告げて、ケビン枢機卿に挨拶と礼を述べると神聖教会をあとにした。


(あのものが、我らの主神が告げていた【異世界人】だ。ケビンよ、彼の者達たちにはあまり干渉することなく、手を求められたときには施しを)


 正義神クルーラーが、念話という心に直接響く声でケビン枢機卿に話しかける。


『ええ。全ては神の御心のままに』


 と告げて、ケビン枢機卿はいつものように雑務へと戻っていった。 



 ○ ○ ○ ○ ○



 それは巨大な建物であった。

 高さにして4階建て、木造と石造りからなる頑丈な作り。

 そしていかにもといった感じの無骨な外観。

 まさに冒険者ギルドとしての威厳を保っているといっても過言ではない建物である。


「はい到着です。初めての人の受付はこっちですね」


 メレアに促されて奥へと歩いていくマチュア。

 建物の中には大勢の人で賑わっていた。

 正面奥には幾つもの受付のあるカウンター。

 右には酒場のカウンターがあり、その横の通路から奥の酒場へと繋がっているようである。


 中央のホール部分にもテーブルと椅子が用意されていて、そこでは冒険者らしき人々が楽しげに歓談している。

 左の壁には巨大な掲示板がいくつも並んでおり、そこに依頼の書かれている羊皮紙らしきものが貼り付けられていた。

 数名の冒険者がそれを眺めて何か話し合いをしているようだから、依頼の掲示板で間違いはないようだ。

 左奥の壁にあるカウンターは、依頼や討伐などで入手したモンスターからの回収物などを買い取っているらしい。

 いまも数名の冒険者が、モンスターの牙などを鑑定してもらっている。



「あー、【このすば】でこんな光景見てたなー。まさか現実として自分で訪れるとは思っていなかったが。今頃ストームも同じような体験をしているんだろうなぁ‥‥」


 いえ、この程度が可愛く見える体験をしているようです。が、それはまた別の機会に。


「コノスバ? マチュアさんのいた村はコノスバというのですか?」

「い、いいえ恐れ多い。今のは聞かなかったことにしてください」


 とメレアさんに慌てて返す。


(危ない危ない。心の言葉が外に出ていた。注意しないと)


 と思いつつ、奥へと歩いて行く。


「ようこそ、そして初めまして。この冒険者ギルドの総合受付を管理していますサーリァと申します。それではさっそく魂の資質の鑑定、そして冒険者ギルドの登録を行いますか?」


 丁寧にそう告げる巨乳のお姉さん。

 実に好みではあるのだが、いまのマチュアでは男が立たない。

 立つものがない。


「はい。よろしくお願いします」


 そう告げて掌から【魂の護符】を取り出す。

 それを目の前にある【鑑定儀】と呼ばれているらしい天秤の右の受け皿に載せる。


──ブゥゥゥゥゥゥゥン

 【鑑定儀】が鳴動を開始し、静かに光輝く。

 【魂の護符】の載っている受け皿がゆっくりと下り、そして反対側に光る球体が発生する。

 それが形を形成し始めると同時に、右の受け皿がゆっくりと上がっていった。

 やがて左右の天秤のバランスが取れた時、左の受け皿に【銀色のプレート】が完成していた。


「ほほう、これはこれは。なかなかの資質をお持ちのようで。左右の天秤にある護符をお取りください」


 右のはマチュアの【魂の護符】。

 まったく形状も色もなにも変わっていないので、それはそのまま掌に取り込む。

 で、問題は左のこれである。


「こちらが冒険者ギルドのカード【ギルドカード】となります。取扱いは【魂の護符】と同じ、いつでも体内に取り込むことができます。マチュアさんの資質は‥‥【シルバークラス】、初登録でBクラス冒険者とは凄いですね」


──ガタッ

 酒場エリアで飲んでいた冒険者の何人かが立ち上がると、こっちに向かって歩いてくる。


「Bクラスとは大したものだ。是非うちのチームに」

「いやいや、その資質はうちのチームでこそ開花する。今なら初期装備すべて揃えてあげよう」

「いーえ、そのお嬢さんはうちで頂くわよ。うちは女性限定のパーティーですから、変な殿方に付きまとわれたりしませんわよ」


 あきらかに勧誘であろう声が聞こえてくる。


「いきなりBクラスとは凄いですね。登録クラスはなんですか?」


 メレアがそう問いかけるので、カードに記されているクラスを確認してみる。


(大魔導師とか、賢者とかが理想なんだが‥‥あれ?)


 この世界の文字は、【GPSコマンド】で脳内に自動的に変換されて見えるのでとても楽である。


「ト、【トリックスター】って書いてありますけれど? これってなんですか?」

 さて。全く判らない未知のキャラクタークラスである。

 マチュアがそう告げた時、勧誘に来ていた冒険者達がスッ‥‥と席へと戻っていった。


「と、トリックスターですか。それはその…」

「マチュアねーちゃんは、レアなクラス引いたんだなー」


 メレアに続いて、フィリアも笑いそうな表情でそう告げる。


「ゴホン。トリックスターとは『何でもそこそこに出来るけれど、実はそうでもない』っていう道化師のクラスさ。シーフのようでシーフでない、術者のようで術者でない。近接かと思うとそうでもないあやふやなクラスだよ。つまりは万能クラスさ」


 にこやかに説明してくれるサイノス。


 はぁ、つまりはここの冒険者にとっては役立たずですか? 器用貧乏という言葉がよく似合うクラスでいらっしゃること。

 それで勧誘ご一行様は飲み直しに戻っていったのですね。


「ふーーーん。まあこれはこれで。何でも出来るって‥‥あれ?」


 そこまで告げて、マチュアは納得した。

 マチュア自身、モードチェンジで近接も術者もなんでも出来る存在である。

 それに神様も俺の気持ちを理解してくれたらしく、虹色でなく銀色にしてくれたようで。


「さすが登録したばかりのシルバーカードは綺麗だね。大切にするといいよ。君が成長するとカードも変化していくからね」


 そうですかーと呟きつつ、銀色のカードをまじまじと見る。

 ん?

 よく見ると銀色にしては様子がおかしい。

 青というか、青銀というか、光の加減でそう見える。


(なんだろう、【鑑定】してみっか‥‥)


 マチュアは、プレートを改めて鑑定してみる。


『冒険者登録プレート解析‥‥ランクSSSのミスリルプレート。表面上はランクBのシルバープレートに見えるように、クルーラー神の加護が与えられている』


──ブーーーーーッ

 何か吹いた。


(ランクSSSってなんだよ?)


 そう突っ込みたいが、突っ込む相手もいない。


──スパァァァァン

 と、突然後頭部にハリセンが二発。


「マチュアさん、落ち着いてください。お顔に動揺の色が溢れていますわ」

「いきなりBランク認定は確かにびっくりするだろうし、そのクラスがトリックスターっていうのもわかるけど、まあ落ち着きましょー」


 メレアとフィリア、ないすツッコミ。


「そ、そうですね。私としたことが。まあ、これはこれ、与えられたクラスを頑張ることにしますね」

 と告げて、とりあえずは落ち着くために(といってもハリセンの効果で落ち着いているのだが)、酒場の方へと歩いていった。


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