第3話 美人プロボウラー殺人事件

 工口こうぐち警部は殺人現場にいるというのに、鼻息が荒くなるを堪えられなかった。警部がいるのは、都内某所にあるボウリング場。

「ガイシャはプロボウラーの阿閉あへ郁子いくこ。トリカブトによる中毒死です」

「…………」

 警部は朝立あさだち巡査の報告も上の空だった。容疑者の一人、中出なかいで麗華れいかのミニスカートの裾を食い入るように見ている。

「さっきから何見てんだよ、エロオヤジ!」

「やや、これは失敬。実は私、皆さんのファンでして」

「あら、嬉しい」

 もう一人の容疑者、鬼頭きとう茉莉奈まりなのショートパンツから伸びる生足も中々艶めかしかった。


 阿閉と中出と鬼頭の美女プロボウラー三人組が、仲良く同じレーンで練習している最中に事件は起きた。

 阿閉が突然血を吐いて倒れたのだ。


     🎳 🎳 🎳


「三人は練習中にじゃがりこサラダ味を食べていたそうです」

「ふむ。ではトリカブトは菓子の中に入れてあったのだな?」

「いえ、それが菓子の中からは毒物は検出されませんでした。ただ阿閉の右手親指、人差指、中指にトリカブトの毒が付着していました。犯人はどうやってガイシャの指に毒を付けたのでしょう?」

「あ、わかった!」

 警部はそう叫ぶと、得意そうに笑った。

「犯人はボールの穴に毒を仕込んでいたんだ! プロボウラーなら当然マイボールを使うから、阿閉だけを狙って殺すことも出来る。我ながら名推理だ!」

 工口警部は自身の推理に満足そうに何度も頷いていた。


「犯人、わかったんだけど」


 肉倉ししくらエリカはそんな警部に蔑んだ視線を向けていた。

「エリカちゃん、推理の横取りは良くないなァ。今回はブランドバッグは買ってやらんぞ。がはは」

「警部の推理は大間違いだよ」

「へ?」

「普通、三穴のボウリング玉に入れる指は親指と中指と薬指じゃん。それなのに何で人差指に毒が付くわけ?」

「あ」

 警部は恥じ入り、すっかり小さくなってしまった。

「毒は犯人を手マンしたときに付いたんだよ」

「手マン?」 

「恐らく、阿閉はレズビアンの痴女で日常的に手マンを繰り返していたんだ。そこで犯人は膣の中に毒を仕込むことを思い付いた」

「馬鹿な!? それじゃあ犯人も粘膜から毒を取り込んで死んでしまうじゃないか!」

「犯人は女性用コンドームを装着していた。それなら自分はトリカブトの毒に侵されず、手マンした阿閉だけを殺すことが出来る。そして鬼頭はショートパンツを履いているので手マンは難しい。犯人はミニスカートの中出麗華」


 こうして事件は一件落着。今回も難事件であった。ふぅ。

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