32話

権平「んじゃ、また明日!」金さんの講話が終わると、3人は家に帰っていった。

権平「ただいまぁ~、腹へった、腹へった。」杏「おかえり~、今用意するね。」杏は闘病中の母親の部屋を片付けていた。狩りで疲れている兄のために今度は料理の支度に向かった。権平「おっかぁ大丈夫かぁ!?」権平は布団で寝ている母親に声をかけた。母「ゴホゴホゴホ、大丈夫、大丈夫、」咳き込む母親はやはり病気がちに見えてしまう。母「そげなことより、金さん元気じゃたか?どうじゃった?」権平「うん、今日は金さんの盗っ人物語だった。楽しかった。」母「あぁ、その話ししよったか金さん…そげな事より最近物騒な事ばかり起きよるらしいから、あんたもきよつけんさい。銀さん言うとったばい。」権平「銀さん来たんか?今日」杏「そうよぉ、お昼過ぎに銀さん来たの。お母さんにお粥持って来て下さって」権平「ほうか、物騒な事件って?」料理を運ぶ杏は丸い小さなテーブルに座る権平と、そのすぐ隣で布団に眠る母親に話しかけるように台所を行ったり来たりしている。権平の家は助八同様ボロボロの狭い1階建てのひと部屋しかない。そこで家族は生活している。

母「ゴホゴホ、なんやら女の子が急におらんくなったんや、最近無かったけど、また2人消えたらしいんじゃ、」権平らが住む伊勢町では数年に一度誘拐事件が起きていた。権平「またかぁ、ほんまにどないなっとんや、」母「最近は西洋人も増えて来とるし、ゴホゴホ、杏あんたもきいつけんさい。」杏「うん。」権平は杏が運んだ料理をガツガツ食べている。権平「うめぇな杏、ありがとな」杏「うん。お兄いちゃんには頑張ってもらわないとね。」権平「心配すんな兄ちゃん付いてるからな。いつでも、守ってやる。」母は心配そうに天井を見上げていた…




金丸「ぐわぁぁぁあ!!」金丸は叫んでいた。イザナギによる手術が始まっていた。麻酔などない手術で気絶寸前の金丸がいる。金丸「ぐわぁぁぁあ!」ヤマトタケル「金丸さん頑張って!」金丸の隣で横になっているタケル、タケルの右手首のホースは金丸の左手首に繋がっている。ホースの中をタケルの血が金丸に流れているのが見える。しかし、タケルとて容易ではない。輸血の量が多すぎるのだ。タケル「クッ!」思わず苦い声を出すタケル。赤鬼である大嶽丸との死闘を終えた後、完全に回復したわけでもないタケルにとっても生死をかけた判断でもある。イザナギにとって手術自体は問題なく進められる余裕はある。長年の経験が物を言う所ではある。


イザナギ(しかし、なんで、ツキヨミが…)


イザナギは金丸の手術をしながら気になっていた。


イザナギ(過去井戸…カコイド…いっいかん!今は手術に集中せねば!しっかりしろ!!)イザナギは自分に言い聞かせた。




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