第2話25功臣の一人が仲間になった。(新田寺起位守義忠)

俺、不止第八一郎鹿目親(ふしだいはちかずろうかめちか)がなぜ父に疎まれているのか。父はよく言う。


「お前の母は獣のように嫉妬深く、この家の空気を吸いずらいものに変えた。」


俺にとっての実母、父にとっての前妻、名前は圓園智恵子(えんぞのちえこ)、彼女は不止家本家の家臣の一族圓園(えんぞの)家の娘だった。そんな彼女が父、不止知地政(ふしちぢまさ)に嫁いだ、政略結婚である。そんな経緯のある結婚と結婚生活がうまくいくはずもなく、父は家臣や妻、子供たちに包み隠さず、遊女遊びを行った。その心労がたたったのであろう、俺が5つのときに亡くなってしまった。ふれ合った時間は少なくとも父の「獣」という言葉が嘘だということは子供ながら俺にも分かる。だから、俺はいつか父と後妻、異母弟を殺したい、殺さなければならないと思うようになった。


 「なんでも、とは言いましたがなんでもするというわけではありませんぞ!」


(新田寺)義忠((にったじの)よしただ)は5秒前の発言を訂正を必死で行っている。6秒前の「何としても当主にしてみせます。」という発言に対してである。しかし俺は揚げ足取りをやめない。


「男が二言を言うべきではない、とそなたは前に言っておったではないか!」


自分の望みに対して義忠の助力を得られるかもしれない、そう思った俺はなりふり構わなくなった。


「父上が俺を殺そうとしておるのだ!先手を打たなくてはならんのだ!」


取ってつけたハッタリである。


「ええ、そうなんですか!御当主が一郎さまを!」


義忠は案外騙されやすい。取ってつけて手放した嘘もあっさり信じた。


「では、今から御当主のところへ参りましょう!」


「いやいや、なぜそうなる?」


声にも出てしまったが本当になぜそういう考えに至る、と本当に思ってしまった。しかも義忠は騙されやすい割に洞察力に優れている、恐らく父の様子を見て俺のハッタリを見抜くだろう。


「いや、あれじゃん自分を殺そうとしている奴の近くに行ったら殺されちゃうかもしれないじゃん。」


「ああ、確かに。では私の家に行きましょう。そこで計画を練りましょう。」


何とかハッタリがばれずに済んだ。脂汗だらっだらになるほどあせった。


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