白波

伊月 杏

短歌

隣室の 機械音すら 響く夜

命の昇華も 捗る気がした


今日だけは 存在しない 月影妬む

切っ欠けにだけは ならないでいて


安寧が 安寧として あるうちは

僕は今だけ 無知でいられる


春風も 初夏の風すら 通りすぎ

降り注ぐのは 甘い梅雨だけ


夕暮れに 海が荒んだ その理由

あの満月を 独占したくて


気の毒に 喉を切られた 閑古鳥

なにを思って 生きているのか


僕はただ 救われたかっただけだった

白波がたつ 僕をさらって


どうせなら 満月の夜に 呼んでくれ

宵に紛れて 閉じ込めてほしい


儚げで 綺麗な詩が 詠める日は

世界がみえなくなっているとき


感情は 波に揉まれるものだから

地に足なんか ついてるはずない

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