第2話 境界世界
気が付くとそこは白い世界だった。
何もない世界。俺は雷に打たれて死んだのだろう。
あの後どうなったんだろう。親不孝をしたなぁ。もっと勉強して大学に受かってキャンパスライフを謳歌したかったなぁ。
などと考えているといつの間にか俺の目の前に白い老人が現れた。
うまく視認できない。消えかかっているような感じだ。
すると老人が
「気が付いたか。そして最初に謝らせてもらう。すまなかった」
「状況がよくわからなくて混乱していますが、初めまして俺は藤崎と申します。
どうして俺に対して謝るのですか?」
「儂がお主ら3人を穿ちぬいてしまったのだ。儂がお前を殺してしまったということだ。もちろん謝って許される問題ではない」
「まずあなたは誰なのですか? ここは天国ですか?」
「儂は亜神だ。ここは境界世界といって簡単に言えば天国の一歩手前だ。儂の管理する世界に神罰を下そうと思ったのだが、なぜかそっちの世界に吸い込まれてしまってな。誠に申し訳なかった」
「これから俺はどうなるんですか?」
「儂の力で転生させる。ただ元の世界には戻せない。申し訳ないが、儂が管理していた世界にしか転生させられない。また儂もそう長くはない。お主に特別な力を与えたいのだがあまり力になれそうにはない」
ずいぶん勝手だなぁと思った。
勝手に転生って。親に何も言えずに別れてしまうのが一番心苦しい。
親孝行したかったなぁ。
ただここで無駄に時間を過ごしていても意味が無い。
色々情報を聞き出さねば。
「転生先の世界はどんなところですか?」
「お主の世界でいう剣と魔法のファンタジー世界だ。現在は多くの魔物がいて、かなり危険な場所もある。先ほどあまり力になれそうにないと言ったが、できる限りは力になりたいと思っている。お主には2つの先天性の固有スキルを与えることができる。ほかの二人には1つだけだが、お主は特別だ」
なぜ特別か分からなかったが一気に質問をしよう。
「質問を幾つかしてもよろしいですか?」
「時間はあまりないが、許す限りは大丈夫だ」
「俺は何歳で転生されますか?」
「0歳。つまり普通に人として生まれる」
「どのような家庭環境でしょうか?」
「不自由しない環境を約束しよう」
「俺に魔法は使えますか?」
「転生者は使える。全属性というわけにはいかないがな」
「全属性? 魔法って何種類あるのですか?」
「今は火、水、風、土の四大属性と神聖魔法だ。何百年前かはもう少しあったのだがな。あとは種族別の魔法が少しだな」
「俺には何属性が使えるのですか」
「ステータスオープンと唱えてみなさい。ここにいる間は自分の能力が詳細に見られる。転生した世界でも見られるが詳細には見られないと思っておきなさい」
俺は言われるがままに
「ステータスオープン」
と唱えた。
【名前】藤崎裕翔
【称号】-
【状態】死人
【レベル】0
【HP】0/0
【MP】0/0
【筋力】0
【敏捷】0
【魔力】0
【器用】0
【耐久】0
【運】30
【固有能力】雷魔法(Lv0/S)
【特殊能力】剣術(Lv0/B)
【特殊能力】風魔法(Lv0/A)
【特殊能力】神聖魔法(Lv0/B)
「なんだこれ」
「ほぅ。力を与えなくても物凄いな」
「これって雷魔法と風魔法、神聖魔法が使えるってことですか?」
「うむ。正しくは使えるようになるということだな。努力は必要だな」
「これ以外の魔法は使えたりしますか?また雷魔法は
「
「ありがとうございます。雷魔法の最後に表示されているSとは何ですか?」
「Sという表示は才能だな。ちなみにSはこの世界で1人いるかいないか。2人いることは無いと思ってよい。S→A→B→C→D→E→F→Gとなっている。Aも時代によっては1人もいない時もある」
おぉ才能に恵まれたようだ。
なんかそう聞くと早く転生して努力してみたくなってくる。
だがまだ情報収集しなければと思っていると
「もう時間があまりなくなってしまった。どういう能力が欲しいとかあるか?できる限り力になろう」
「では努力をしたらしただけ恵まれる才能が欲しいです」
「それは普通のことではないのか?」
「普通なのかもしれませんが、俺の場合レベルが上がっても全くステータスが伸びないとかありえそうなので……」
「そうか、それでは【天賦】を与えよう。これは一部では外れ能力と呼ばれているのだが、そんなことは無い。この能力のせいで挫けた者もいるのだがお主なら大丈夫であろう。次のレベルに必要な経験値が人の3倍となる。しかしレベルが上がると必ず運以外の全ての能力が1ずつ上乗せして上がる。また魔力の回復スピードが早くなる。ちなみに普通の人間はレベルが1上がってもすべての能力が1ずつ上がるわけではない。HP、MP、運以外の項目が合計で2〜5増える程度だ」
確実に人よりも成長できるということか。
「ありがとうございます」
「それではもう一つは儂の残った能力でできる限りのものを与えよう。そうだな、儂の力が残っていれば【天眼】を与える。これは他者や物を鑑定できたり魔力の流れがわかったり、夜目が利いたりかなり便利なものだ。他にもあるが時間がないので能力の説明はここまでだ」
「亜神様はどうなるのですか?」
「儂はお主を転生させたら死ぬだろう。他の二人は儂の分体が対応する。分体なのでオリジナルの儂の半分の力しかないのでそれぞれに少しの力しか与えることができず、またお主へのように説明をきちんとすることはできないだろうが」
「そう……ですか」
「さて本当に時間切れのようだ。儂の代わりに頼むぞ」
そう言って亜神は消えていく。
それと共に俺の転移が始まった。
最後にステータスをもう一度見てみる。
【名前】藤崎裕翔
【称号】-
【状態】死人
【レベル】0
【HP】0/0
【MP】0/0
【筋力】0
【敏捷】0
【魔力】0
【器用】0
【耐久】0
【運】30
【固有能力】天賦(LvMAX)
【固有能力】天眼(Lv1)
【固有能力】雷魔法(Lv0/S)
【特殊能力】剣術(Lv0/B)
【特殊能力】風魔法(Lv0/A)
【特殊能力】神聖魔法(Lv0/B)
無事に天眼を受け取れたようだ。
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