第29話 よい子の皆は、人の話はちゃんと聞こう2

 その後、それぞれ用意を済ました俺達は、アテナが待つ神殿に向かった。中心街に出ると、何故かそこには前日よりも活気があるものとなっていた。


 何処かで、大きい大会でも始まるのかな? それと、さっきから周りの視線が凄い。


 やはりこんなにキャラが濃い人達を引き連れると、嫌でも注目が集まるんだな。


 そんな事を考えながら歩いていると、いつの間にかアテナの神殿の前に着いていた。


 神殿の中に入ると、そこで働いている職員さんたちが慌ただしく働いていた。そのうちの一人が、俺達の存在に気が付くと駆け寄って来る。


「アテナ様の御友人がた、お待ちしておりました。アテナ様はもう少しで来られますので、奥の応接間で少々お待ちください。ご案内します」


 俺達は言われるがまま、応接間で待機することにした。


 しばらくすると、部屋の外から『ガシャン、ガシャン』と金属音が近づいてくるのが聞こえた。


 そして、扉が豪快に開くとそこには、全身を鎧で身にまとった人物が立っていた。


「待たせたな!」

「って、誰だよ!」

「ん? 俺だよ、俺」


 その鎧兵は仮面部分を開けると、その中からアテナの顔が見えた。


「アテナ! 何だよその恰好は? 今から何処に行くつもりだ!」

「何処に行くって、何を言っているんだ? お前らと競技場に行くに決まっているだろ?」

「いやいやいや! 今からやる事はゲートボールだよ! そんな恰好じゃ、動きにくくて不利になるに決まってるじゃん!」


 俺の説明を聞くと、アテナは少し驚愕した表情を浮かべた。


「なっ、なるほど。幸太は防御力よりも機動性を重視するんだな。やはり幸太は目の付け所が違う……。幸太! 俺は感心したぞ!」


 やはり、この女神は頭が少し残念な人なのだろう。


 その後、アテナはあの重そうな鎧を脱ぎ、以前と同じような身軽な格好に戻った。


「よし、待たせたな。今度こそ戦場に行こうか」


 アテナの用意を終えた事を確認し、俺はもう一度これからのチーム戦の為に士気を上げる事にした。


「みんな、聞いてくれ! これから俺達は難しい壁にぶつかろうとしている。しかし、俺達は一人一人特別な力を持っていると、俺は信じている。だから、そんな俺達が手を取り合って力を合わせれば、壊せない壁なんて無いと思うんだ! みんな、栄えある勝利を掴む為、俺に力を貸してくれ!」


 昨日の夜から密かに考えていたスピーチを完璧に言いのけた。


「おお! やっとこれで欲しかった装備を買えるのじゃ!」

「まあ、なんて美しい絵なのかしら。これを描いた人は、きっと愛の溢れる方だったのでしょう」

「やあ、受付のレディー。今日も君は麗しいね。どうか今日は僕を応援してくれるかな? 君の声が僕に力をくれる」

「うっ、うおおおおおおおおおお‼ いよいよ戦だ! やってやる! やってやる! 気合いだ! 気合いだ! 気合いだああああああ‼」


 よい子の皆は、人の話はちゃんと聞こうね。

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