第19話 剣士と剣

「師匠、どうでした?美味しかったですか?」


お粥だけど味付けには凝ってるし意外と食べられると思うんだけど…どうかな?


「え…あ…その…ご、ごめんなさい!」

「…えっ!?」


ちょっ…師匠!?どこ行くの師匠!?

そもそもどうしたの師匠!?


ーーー


「はぁ…はぁ…ようやく止まりましたね師匠…」

「す、すまないレア…しかし剣が無いと思うと声が出なくて…剣を取りに行くとも言えなかったんだ」


そうだったのか…

剣が無いと話せもしないなんて…


「これまた難儀ですね…」

「うむ…すまないなレア…」


師匠が謝るようなことじゃ無いのに…

どうにかして師匠をこの呪いから開放して上げたいよなぁ…


「…よし!師匠!それ、治しましょう!」

「え…?治すってどうやって…」


「街の暮らしに慣れるのです!山籠りでその癖が付いたのなら街に慣れれば癖は消える…はず!」

「そ、そうだな…暫く、街に居よう」


なんか返事が煮えきらないけど何かあったのかな?

いや、修行出来ないのがもどかしいのか?


わ、分からん…


「師匠、何か困った事があったらなんでもしますからどんどん言って下さいね!」

「…!わ、分かった」


よし!これで師匠も不便したとしても俺の手で解決できるな!


「じゃ、帰りましょうか!」

「…いや!」


いや?いやって…あのいや?

断るときのいや?


「えっ…いや、なんで…?」

「あの…その…早速お願いが一つあるんだ」


なーんだ!そういうことか!

何がしたいんだ?早速街で買い物したいとか?


「何ですか!何でも言って下さい!」

「その…俺の事は師匠じゃなくてセイルと呼んで欲しいんだ…」


…ああ、そうだった、そうだったよ

俺はなんて馬鹿なんだ、こんな大切なことを忘れて師匠を…セイルを救える訳ないじゃないか


「…そうだったな、セイル」

「…!レアっ…!」


おー、なんか抱きついてきたな…

いや、やっぱり一応は覚えてて感動した…のか?


ーーー


「師匠…急にセイルさんの事名前で呼ぶようになりましたね?」

「それは…」


俺が約束を忘れてたとは言えないし…

どう誤魔化すか、出来ればセイルに迷惑は掛けたくないし難しいな…


「…いや、良いんですよ、ただ急に名前で呼ぶようになった理由を教えて欲しいんです」

「あー、約束だったから…?」


これなら嘘じゃないし忘れたとも言わなくて済む

なによりセイルに迷惑が掛からん、完璧…


「ふーん、そうですか、なら良いんですよ」

「そうか」


…いや、なら良いって何?

駄目な可能性も有ったってこと???


ーーー


「なぁレア、俺を駄目な師匠を罵倒してくれ殴ってくれ、俺に…罰をくれ」

「…え"っ!?!?!?」


「頼む、頼むよ…罰をくれよ…」

「えぇ…悪い事してないのに罰なんて…嫌ですよ」



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