閑話 魔術師の命令

あれ…?

私、生きてる…?


「おい!アリス!起きろ!どうしたんだ!?」

「え…?師匠?何で私なんか…」


何で助けてくれたの?

私はもうあなたの弟子でも無いのに…


「お前は(元とはいえ)たった一人弟子のなんだから助けるに決まってるだろ?」

「うぁ…うぅ…師匠、ごめんなさいぃ…」


あんなことをしたのに…許してくれて…

こんな私を弟子だって…たった一人の弟子だって言ってくれる師匠を、何で…!


師匠の事を裏切ってごめんなさい

こんなにダメダメな弟子でごめんなさい…!


「お、落ち着け、お前が謝る必要は無い、悪いのは全てカグアなんだ、だから謝るなアリス」

「私は師匠を裏切りました、だから生きてる必要なんてないのに…」


こんなダメダメな

すぐに裏切る馬鹿弟子なんて死んだ方が…


「流石にそこまではしなくても良いんじゃ…」

「いえ!師匠を裏切るというのは重大な罪です!」


そこまでではありません!

死んでも償いきれないほどの罪ですから!


「でも今回は操られてたんだろ?しょうがないってだからそこまで…」

「いえ!私は師匠を裏切ったのです!そんなクズは死ぬべきです!」


操られようがなんだろうが死ぬべきです!

それに…もっと私がアイツを警戒していればこんな事にならずに済んだかもしれないのに…


「いや死んだら元も子もないじゃん!お願いだから生きててくれよ!」

「で、でも…生きてたら目障りじゃありませんか?こんな裏切り者」


こんなに引き止めてくれるなんて…!

でも私は死ぬべきなんです!止めないで下さい!


「…じゃあ俺の言うことを何でも一つ聞いてくれ」

「…!はい!一つと言わず永遠に奴隷にしてくれるくらいでも良いのに…なんて優しい!」


師匠の命令を何でも一つ聞く!?

一つだけなのは残念だけどこれで師匠の望む方法で罪を償うことができます!


「…」


あ、あれ?

師匠、急に黙りこくってどうしたんですか!?

と、とりあえずもう一度だけ…


「それで、私は何をすれば良いのでしょうか!」

「えーっと…」


ハッ!

もしかしてこんな私にも遠慮して!?


「師匠、私はどんな命令でも受け入れますからね!」


だから安心してどんな無茶な命令でもしてください!必ず遂行して見せます!


「セイル師匠が籠もった山…テュポン山脈に付いてきて…そして師匠探索に付き合ってもらう!」


え…?師匠の師匠って…セイルさんの事…

命令って言うのは私に罪を償わせる為でも私を少しでも好いてくれている訳でもなく…師匠探索の為?


「あっ…で、ですよね…」

「あ、あれ?アリス?どうした?何で急に泣きそうになるんだ?ど、どうしてなんだぁ!?」


や、やっぱりこんな駄目女嫌ですよね…

知ってました!だから、泣いちゃ…駄目なのに…!


うぅ…師匠…私を愛して下さいよ…

師匠ぉ…

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