第5話 今俺は世界の全てに感謝してます

俺と祈の席は俺から見て斜め右の微妙な位置にある。それも今日まで、これから起こるのは神の奇跡、席替えだ。ウチのクラスは席替えアプリなる便利ツールでワンクリックで席が決まるため一喜一憂がない。その代わりショックも少ないので割とあっさり受け入れられている。


祈の隣でお願いします祈の隣でお願いします祈の祈の祈祈・・・・・


「じゃあ席替えルーレットするぞ、ほい」


パッ


俺の番号は9番、祈は3番だ。プロジェクターで写された結果には・・・対角線状に一番遠い席同士なのがはっきりと見えた。


「「チッ」」


え?誰か俺の他に舌打ちした?


周りを見ても前になって嘆いてるやつ、友達と隣で騒いでるやつ、明らかに不機嫌な祈、後ろに行ってはしゃいでるやつしかいないけど・・・・・・・


いたわ舌打ちしたっぽい人!


まあ最前列の廊下側なら誰でも不機嫌になるよな。俺は別件でキレそうだけど。

はぁ〜〜・・・世界の全てに恨みます。このやろー


ーーーーーーーーー


全てがどうでも良くなってぼーっとしていたらいつの間にか昼休みになっていた。今日は隼人はやとは彼女と飯って言ってたな。一人で学食食うか。


教室を出ようとすると同時に頭の中でアインシュタインも驚きの天才的発想に辿り着いてしまった。


(祈を昼飯に誘えば話せるんじゃね?)


我ながら自分の才能が恐ろしい・・・

そうと決まれば早速誘いに行こう


立ち上がって祈の席に行くとなにやらモジモジしているんですが、どうしたんだろうか?


「祈、一緒に飯食わないか?これから学食に行くんだけど俺今日ぼっち飯だからよければと思ったんだが」


「にゃ!?ゴ、ゴホン。いいわよ、ちょうど食べようとしてた頃だし、そうだ!今日兄さんの弁当と間違えて持ってきたみたいでよかったら食べる?量が倍くらいあって明らかに食べきれないのよね。予備にいつも割り箸持ってるから貸してあげるわ、また新しいの返してちょうだいね」


「すごいやこんなに早く提案から確定事項になるの初めてだ。よかったら食べるから二言で断定されたぞ。そういうことならありがたくいただくけど」


「ありがとう、じゃあ行きましょうか」


食堂に着くと少し行くのが遅かったこともあって席が埋まってしまっていた。


「こりゃどっか別の場所じゃないと無理そうだな。どうしようか」


「屋上前の踊り場はどうかしら、静かだし人も来ないからたまに利用しているのよ」


「ならそこで」


・・・なんか学校内を祈と並んで歩くの新鮮でいいな


「ここよ」


「おお、本当に静かで人いない」


「ここの利点は文化祭とかで使う机と椅子があるから階段に座らずに食べられることね」


「確かに。結構な穴場スポット発見だ」


「ここは私のレストルームよ、勝手な使用は禁止するわ。許可を取ってからにしなさい付き人さん」


「なんて横暴な・・・!」


「ずっと話してるのもアレだし食べましょう。はいこれ、あなたの分よ」


「兄貴の分じゃねえのか?」


「・・・そうだけど今はあなたのものよ」


「ありがたや、いただきます」


「いただきます」


え、めっちゃ量多いなこれ。祈兄とんでもない食欲の持ち主かもしれん。何から食おうかな・・・・・ん?


「食べないのか?」


「あなたこそ、せっかく保温なのに冷めてしまうわよ」


「それもそうか、じゃあうまそうなこの豚肉から・・・・・・うめぇ!」


「そ、よかったわ。これ私が作ったからまずいなんてほざいたら血祭りにあげてたかも」


「今なんと?」


「血祭り」

「いやその前」

「私の手料理よ」


パァーン!


「ど、どうしたの急に自分の顔引っ叩いて。流石に引くわよ」


「俺の中のキモいを必死に抑えた結果だ許せ」


「なにその変な動機」


いや知らずに好きなやつの手料理食ってたんだぞ!?唐突にカミングアウトされてにやけるの抑えるの無理だって!ああ神様、今俺は世界中の全てに感謝しています。

それにしても関わるようになってからだいぶ態度が丸くなった気がする。付き人認定されてる時点であんまし変わってないのかもしれないけど。


「ちなみにどれか一つでもまずいとか言ったら殺すから」


やっぱ嫌われてんのかな・・・?

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