第9話 束の間の休憩

 私は誘拐犯を刺激しない範囲でこの街を紹介しよう。東京都民なら板橋区を想像すれば良い。JRや地下鉄、私鉄はあるが、ちょうど良く田舎。そして、ベッドタウンのため、家族が多い。また、港区ほどの煌びやかさはない。そこは好感度No.1タレント並の潔白さがある街だ。私は誘拐犯が待つアジトへと向かう道中、お腹から悲鳴を上げるような音がした。私は昼食を食べ損ねた。そこで、近くのコンビニに入り、軽めの昼食を済ませた。久しぶりにこの街に来た感想として、何とも言えない実家のような安心感がある。過度に華やかすぎず、住みずらいほど田舎でもない。ここは、ビジネス街ではないため、自動車やバイクの通りが少ない。デリバリーをしている若者も当然いない。いつ来ても落着きがある街だ。


 しかし、私がこの街に来た理由はただ1つ。息子を取り戻すことだ。しばらく歩いた後、誘拐犯が待っているであろう目星の建物の前に辿り着いた。

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