第4話 撮影の裏側

 早速、着替え終わった私は待機席にて撮影を見る。戦隊ヒーローという性質上、ヒーロー側の尺が圧倒的に多くなる。私たちの役目はCM前に悪事を働く様子をほのめかすことで、キッズ中心の視聴者の注意を引き付ける。

 

 そして、悪事を働き、ヒーローが登場。それからヒーローたちを追い詰めることで、そこそこのやりがいを感じる。そして、ヒーローたちのキックを受け、退散。20年以上のキャリアである私でも毎回起きる爆破演出には慣れない。だって、至近距離であの爆破を受けることってあるだろうか。

 

 とはいえ、大きさの割に安全に爆破しているので心配は無用だ。そして、「カットー!OKです。今回も良いシーンが撮れました。」といった監督の一声で仕事が終わる。ちなみにこれは企業秘密なんだが、毎回ヒーローたちから「キック、痛くなかったですか?」といった心配をされる。もちろん、視聴者を満足させるには派手な演出は必要である。そのため、リアルさが求められる。

 

 しかし、何十年の歴史がある戦隊ヒーローのノウハウは侮ることなかれ。断言しよう。100%安全である。ヒーローたちは上手くキックがみぞおちに入らないように寸止めしつつ、私は受け身を取る。だから、安全なのだ。この技術はどの会社でも役に立たない特技ではあるが、地味に誇っているところだ。

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