【 恋色 】

 それから月日は流れ、もう3年目の春を迎える。

 昨日、私は大学を無事に卒業した。

 でも、彼は卒業式には姿を現さなかった……。


「それは、当たり前なのかな……」


 思わずポロリと涙が頬を一筋こぼれ落ちた。


 それを窓の外を眺めながら、そっと左手の親指でぬぐう。

 明日、私は日本に帰る予定だ。


 彼と付き合っている頃、しきりに地元の海のことを自慢していた。


「僕の実家があるところの近くに、綺麗な海があって、小さい頃よくそこへ泳ぎに行ったんだ。いつか君にそこへ連れて行ってあげたい。その海辺には、大きな岩があって、それがまるで怪獣のように見えてね……」


 彼は地元の話になると、いつも夢中になって、楽しそうに私に話してくれた。

 彼のその嬉しそうにしている顔が忘れられない。


 笑うとやわらかそうな両頬に、笑窪えくぼができる。

 その笑窪を見るのが、好きだった。


 大学へ留学するのをきっかけに髪を茶色に染めて、メガネだったのをコンタクトに変え、準備万端で大学デビューしたとのこと。

 そんな時に、私と出会ってふたりはすぐに恋に落ちた……。


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