第22話 魔術大会開幕!!
降魔はいつも通り寮の自分の部屋で目を覚ます。
もう何年も使っている、最早第2の実家と言っても過言ではない所だ。
部屋は綺麗にされており、殆ど乱れていない。
降魔は時計を見る。
「午前6時28分……少し体が痛いが起きるか」
その原因は、双葉との特訓のせいである。
双葉は降魔や幻影の戦士と戦ったりしていたが、降魔は何と、双葉が召喚したファフニールと戦っていた。
結局一回もダメージを負わせることは出来なかったが、人間の中では最上級だとファフニール直々に行ってくれた。
降魔はベッドから起き上がり、伸びをする。
カーテンを開けると太陽の光が射し込み、外では既に生徒が何人かちらほらと歩いていた。
降魔は、早いなぁ……と思いながら顔を洗い、髪を整えてからキッチンに移動する。
そして冷蔵庫の中身を見て朝ごはんを決める。
「今日は……味噌汁とご飯と目玉焼きでいいか」
降魔は手際良く2つのIHを使って味噌汁と目玉焼きを作っていく。
ご飯は炊飯器で炊いてあるため気にする必要はない。
降魔は10分ほどで作り終える。
皿に盛り付けて机に置き、自分も椅子に座って手を合わせる。
「いただきます」
降魔はそれから15分程で食べ終わり、服を着替える。
そして玄関に移動し、誰もいない部屋に向けて、
「行ってきます」
と言い、玄関のドアを開けた。
外に出ると既に生徒が沢山登校しており、いつもなら『朝だるい……』とか言って死んだように行っているのに、今はキラキラした笑顔で向かっている。
一部にはいつも通りの顔の奴もいるが。
そして更にいつもと違うのは、様々な年齢の人達が続々と学園に入って行っていることだ。
降魔はそんな人たちを見ながら呟く。
「いよいよ魔術大会か……」
遂に魔術大会が始まった。
~~~~~
降魔が教室に着くと、登校していた時の素晴らしい雰囲気などこの場所には存在しなかった。
「とうとう来てしまったな……今日も言う日が……」
「俺たちを地獄へと連れて行く列車が来たようなもんだぜ……」
「私たちこれから恥をかかなきゃいけないのね……」
「またお気に入りのコスメをとられるのはイヤ……」
(おいおい、みんな毎年変わらず死んだよう顔してるな。。……まぁ去年までは俺も同じようにしていたけどな。それに最後の奴はそれが同級生なら教師に相談しな)
このクラスでいつも通りなのは、降魔を除くと加恋のみだった。
降魔は相変わらずギャルだなと加恋はを見ながら思っていると、バッチリ目が合う。
それからお互いにどちらかが目を背ければいいものの、どちらも逸らさないため見つめ合う状態になってしまった。
しかし先に目を背けたのは加恋だった。
心なしか耳が赤くなっている気がしないこともないが、降魔は特に興味がないため気付かない。
するとやっと担任の明美が教室に入ってくる。
しかし普段とはかけ離れた教室の雰囲気に目を丸くしていた。
「ど、どうしたのですか……?」
彼女は今年からZ組の担任になったので知らないらしい。
去年までの3年間は違う教師が担任をしていた。
そんな明美に加恋が言う。
「私達Z組にとっては魔術大会は恥をかくだけの最悪な行事なんですよ! 適合率が低いので何もできないし~」
その言葉に他な生徒も同意する。
勿論降魔も。
「そ、そうなのですか……。そう言えば先生が学生の時もZ組の友達の顔が死んでいた気がしますが、そう言うことだったのですね……。で、ですが、魔術大会には美味しい料理もあるので、是非それを楽しんでください!」
明美がそう言うと、クラスの生徒が『そう言えばこの学園の料理ってめちゃくちゃ美味いよな……。俺はずっと飯でも食っていようかな……』と言い出した。
それを皮切りに少しずつ生徒のテンションが戻り出す。
しかし降魔はそれを見て少し憐れみのこもった笑みを浮かべる。
(コイツら魔術大会のことを知らないからな……。毎年終わった後はご飯なんかより教室にいるのが1番落ち着くことを知るんだろうな……)
自分はあまり関係ないが、他の大抵の生徒がそうなりそうな予感がしている降魔。
降魔はSHRが終わると、ある人へと電話する。
「もしもし双葉?」
『ええ、双葉ですよ。昨日全然レインどころか電話に出てくれなかった降魔君?』
昨日降魔は特訓で疲れすぎてほぼ一日中寝ていた。
そのため昨日は全く電話にも出れず、レインも既読スルーと言う失態を犯してしまっていた。
そのため朝からご機嫌斜めになっているようだ。
「いや本当に悪かった。昨日は1日中寝てたんだ」
『……どうせそんなことだろうとは思っていたわ。もう昨日のことはいいから早く来て』
「どこに行けばいいんだ?」
『第1練習場の前よ。早く来ないと昨日のこと許さないんだからね』
双葉はそれだけ言うと電話を切ってしまった。
降魔は自分が悪いので特に何も言わず、さっさと行くことにする。
この時の降魔は、この後面倒なことに巻き込まれるなんて全く考えてもいなかった。
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