第3話

 キャラクタークリエイトは外見の微調整、ステータスの割り振りなどを行う。

 目の前に自分と瓜二つの姿が現れてそれを見ながら外見を調整するのだが、過度な変更はできない。

「懐かしいな、10年前の俺……」

 目つきの悪い顔に何も知らなかった超初心者が粋がって美容院でセットしたツンツンのオールバック。

 見た目だけならゲームが得意そうだし、実際にできる方だと思っていた。

 だが、現実はそんなに甘くなくて、すぐに詰まって助けを求めたプレイヤーには騙され殺され散々だった。

 だが今の俺は違う。

 今の誰も知らない10年分の知識を蓄えた廃プレイヤーだ。


「見た目はこのままでいこう。俺はやるぞ、一年後に始まるプロリーグ、あの華々しい舞台に立つ!!」

 外見を決めれば次はステータスだ。

 攻撃力全振りで武器はロングソードを選択。

 チュートリアルの塔の中なら一度振ったステータスは自由に変更することができるし、武器も選択し放題、各々が自分に合ったスタイルを見つけれるようになっている。


「まぁ、俺には必要ないけどな」

 全てを終えると再び元いた場所に戻される。

 チュートリアルの塔は全部で5階層、頂上から一階を目指してそこにある扉を開けば冒険の始まりだ。


 5階層は特に何もない。

 運営が接続チェックやサーバー負荷軽減のためにプレイヤーを一度この空間に集めるだけの場所。

 ゲートを潜れば4階に飛ぶことができる。


「本当に懐かしいな」

 塔とは言っても5階以外は広大な草原が広がっていて、そこかしこで初心者プレイヤーがモンスターと戦闘を繰り広げている。

 この階でポップするのはスライムだけで5匹のスライムを倒せば次の階層に進むゲートを潜れる。

 この階では基本的な攻撃とドロップについてのチュートリアルになる。

 青色のスライム、ブルースライムを倒せばマナポーション、赤色のスライム、レッドスライムを倒せば回復ポーションが入った小瓶がドロップする。

 どちらのスライムにも共通した外れドロップがあり、スライムゼリーを落とす。


「そぉれっと」

 ロングソードなら一撃で簡単に倒すことができる。

 感覚は悪くない。

 むしろ、いいくらいで、体も頭も冴え渡っている。

 これが若さか……

 それに冷静になって考えれば前世は栄養不足と寝不足でまともじゃなかったもんな。


 ちなみにドロップしたアイテムはアイテムボックスに自動的に入る。

 容量はそこまで大きくないし、同じアイテムは個数制限もあり、アイテムボックスに入らなかった場合はその場に落ちて、一定時間経過で消滅する。

 フィールドに落ちたアイテムは所有権がなくなるので容量に気をつけないとレアアイテムを取られる可能性がある。

 まぁ、俺はそんな初歩的なミスをすることないけど。


「さてと、準備運動はこの辺にして次の階層に行こうか」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る