第十三話 其ハ何ヲ求メ彷徨ウカ⑤

えっえ、き、来た?来たよ!?

スキル受け取り来たよ!


突き破った先、白を基調としたどこか神秘的な部屋に混乱、狂喜しながらも決して警戒は解かない。


散々俺を殺そうとしてきた所だ、もう信用できない。でも、そろそろご褒美あってもいいんじゃない?ほら、スキルPLS!


ほいほい、ほいほいほい


必死に手と腕を使って扇ぎ、早よくれ早よくれとせがむ。既に受けとる準備は出来ているのだ、厨二病っぽい能力でも世界を救っちゃう能力でも何でもいいから早よ寄越せ。






........あの、結構待ってるんすけど、貰えねぇんだけど。何か、何処かから早よ次行けっていう圧を感じるんすけど主に複数!


「Come ooooooooonッ!(流暢に)」


ふぅ、何もでないと。


いや、まぁ分かってましたよ?どうせ?俺は不憫枠ですよチクショウ!


俺って馬鹿だよねぇ、マジでスキルか何か貰えると思って一時間ぐらい無意味にこの場に留まってたんだよ?外に出るための道を探してるってのに、ねぇ?


はぁ、現実見よ。






んー、何かの石像っぽい?いや、石?これ。目につくとこ全部見て回ってるけど、これ本当にただの石像か?


現在、突き破った先の部屋(俺命名)の入ってすぐの場所を探索中。一本の石造りの道とその周りには小石が広がり、どことなく神社を彷彿とさせるような構造をしていた。


そして、道を挟むように建てられ、まるでおれを睨み付けるかのように配置されている像。それが何の生き物を表現しているのかは知らないが、多分狛犬的なものだろう。


いや、何故に狛犬?ここもしかして日本?


.........んなわけあってたまるか。

日本の何処にあんなバカデカい森があって、何処を探したら幼虫の段階で人の血吸う虫が見つかんだよ。


海外にしては暑くなかったし、乾燥もしてなかったし、あっても温帯だが、森の中にこんな巨大な神殿のある国があるなんて聞いたこともないし、何よりここは日本の物に


さっきまでまごうことなき異世界だったはずが、壁を越えると日本風の神社、地球と共通点の多いものがいきなり出てきたのだ。


可能性は低いが、ここが地球、そして日本に関連する所だという仮説も視野にいれなければならなあかもしれない。


─真面目な考察は取り敢えず置いておいて、今はこの狛犬?に使われてる材料だ。なんだろう、こう、一見何の変哲もなさそうに見えるんだが、違和感を感じずにはいられない。


大理石、ってわけでは無さそうだし、玄武岩、安山岩、流紋岩、シンカンセン.........って何の略称だったっけ?まぁ、いいか。


俺の記憶にある理科の教科書君の中に似たようなものが存在しない。いや、そもそもおかしいのは、コイツ、材料が紫色なことなんだよな。


あぁ、十分おかしかったわコイツ。何で俺はこれを普通の石たまと思った?あり得ないだろ。


紫色........いや黒か?分からんが、暗めの色をして、アメジストっぽいんだが、決してそうではないと思う。こんなデカイアメジストは某ゲームのアメジストジオードぐらいだ。


それに、鉱石系統の中でも硬い方だったはず..........ダイヤモンドがモース10に対してモース7か?そもそもここまで削れるほどのデカさを掘り出せるってことがあり得ない。


自分の知識がおぼろげ過ぎて信用できないが、なんかこれは違う気がするなぁ。............話脱線しすぎたな。


触ってみようとする。どんな感じかな?ざらざらしてんのかな、ツルツル滑らかなのかな?


パチッ


「アイテェッ!」


静電気喰らったんだけど!?確かに冬だったけど、俺そんな母さん体質じゃねぇよ!ってか、コイツ摩擦で静電気貯められてたってこと?いや、地味に嫌な攻撃してくるな!?


うん、ちょっと指先ヒリヒリする。涙目になるくらいには痛かったんだからな!?


クソッ、一矢報いる!テイッ


ゴン


あー、かってぇ。

あの、蹴ってみたら分かったけどさ、あり得ん硬さだなおい、足ジンジンするんだが?


............ テイッ


バコォ!


「は?」


諦めきれずに今度は狛犬の脳天にチョップを喰らわせたら、なんか派手に壊れたんだが!?足より力いれてないし、あんだけ硬かったら下手したら俺の手骨折ものだったのに、何故?


ま、まぁ、いいや。流石に真面目にならないと行けない時間だし。人はこういう意味のない時間が大切なんだよね。


ほら、学校で寝るときだってそうじゃん。意味ない事って先生達が叱るけど、あれで午後を耐え抜くんだから、必要だろ?


............まぁ、普通に受けた方がいいんだろうけどさ?あっ、破片持ってこ。


ま、そんな感じでずっと真面目なままだと疲れるし、なんなら今現在進行形で疲れてるからこういうのが必要なんだ。


さてさて、いい感じに手詰まってきたことだし、そろそろあそこに行くか。


ん?あれ、二つ目の狛犬っぽいやつも壊れてるんだが?俺なんか触ったっけ?...........しーらね。



尚、実際にものを蹴ったりチョップしたりすると周りから変な目で見られたり、壊したら器物損壊にあたるので、絶対にやってはいけません。...........正直今もヒヤヒヤしてるからね?



日本だったら法律ギリギリな事をしたが、ワタシシテマセンヨの精神で先へと進む。


さっきの狛犬らしきもの以降、それといってかわったようなところはない。ずっと道が続いているだけ。まぁ、おかしなところがあっても今は絶対気づけないと思うがな。


「これだな、本殿。...........あれ?本殿って言い方で合ってるっけ?」


あー、建物ね?建物。でかいんだよねこれも。本当巨人が参拝しに来てんのかってぐらいなんだよな、ここ全て。場違いなほど小さな俺と等身大程の狛犬は除外して。


うん、完全にこれ神社だね、屋根に瓦が使われてるし、柱も木製、繋ぎ目に特に釘の後がないから組み合わせて建築されている可能性が高い。


このような技術は日本固有のものとされていて、伝統的な建物、つまり昔のものによく見られる造りとされている。


やっぱ日本なのか?いや、でもそれだとあの剣の説明がつかない。.........もしかしてこれが流行ってる現代フアンタズィー?


あり得る、というかもう何でもアリだろ。パソコンヤローが全ての元凶だし、何もかもがアイツのせいってことでよくね?


うん、そうしよう。


ではでは、今度こそ本格的な探索パートへと入りますかぁ。

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