第十話 其ハ何ヲ求メ彷徨ウカ②

とりあえず、現実逃避を1時間弱、やってみてわかったことがある。


ここには多分俺以外存在しないということ。

わかったことに多分があるのはおかしいかもしれないが、多分、だ。


もちろん人なんていない事は見ただけでわかる。こんな障害物のないだだっ広い場所だ。

ここにもし人が住んでいたら俺が横たわっているのを見て声をかけてくれるはずだ.......俺がブス過ぎて声かけなかったとか、無いよね?............ そうだと信じさせて。


まぁ何にせよ、そんな事はなかったし、ましてやモンスターに襲われた感じも、痕跡もない。


俺が一体何故こんなところで気絶睡眠できたんだろうと心底不思議に思うが、そのおかげでこのような結論が出せた。


マジで気絶するぶっ倒れる直前の俺ナイスすぎる。


まそんな事は置いといて、


「どこにも行けそうなとこはなさ.....そうだな。」


なんもない。

もう辺り一面真っ白で逆に怖いとさえ思う。

よくよく確認すると、埃ひとつもないように思える。


周りは、壁が見えないほど広いからどうなってるかわからない。というよりは周りも白くて分かんない。くっそ高い屋根みたいなものがあることだけは一目瞭然だった。


え、俺死んでないよね?俺の心臓はリズミカルに血液流してるよね?


......多分大丈夫そう。


死んでないと信じることにして、俺は、この状況に見覚えが、というかつい今日のあの出来事で経験済みな気がした。


「また、俺に歩けと....?」


あの、休憩くれないですか?

ふざけんな!マジで1500メートル走してる気分だよ。


下手したらそれよか太刀が悪い。

風景が変わらないのは精神に応える。


「それでも行くしかないのか....今日1日でマジで痩せれるんじゃね?」


そんな淡い希望くだらねぇ考えを胸に抱きながら、俺は再び歩き始めた。




自分のことに必死でら俺以外の異物に気付くことなどできるはずもなく。






あー、もう辛い。だーれも居ないから喋ることすらできない。


一人語りは気持ち悪がられるし。

あ、でも誰も居ないからいいのか。


「なーんでこんなことになったんだろ?」


.................


「俺なんも悪いことした覚えねぇし、神と会ってスキルゲットの記憶なんてないし、そもそも使えねぇし。」


................


「..............。」


どれだけ話しても静寂だけが広がる。

建物内の壁に音が反射するものだと思っていたが、広すぎるせいか、そんなエコーはかからなかった。


ただひたすら歩き続ける。

疲れた。今頃みんなは何やってんだろうな。あーあ、後でゲームするつもりだったのにな。デスコードで友達と連絡し合おうと思ってたんだけどな。


.............。


辛い。一人は楽だが、適度な距離を保った人がいないとやはり寂しいものは寂しい。大体一人の時間は、小説を読んで気を紛らわせていたが、こんなところじゃそんなこともできやしないから、一人でも話相手が欲しい。


でも、


自分でも分かってたけど、何というか、関心が薄いというか、興味があっても欲しくなるようなものがないというか、貪欲というものがあまりに分からないというか。


周りに人がいなけりゃいないで自己完結出来てしまう。


そりゃ見知った人間がいれば話ができるし、そりゃ楽しいだろうが、長時間一緒にいたり疲労が溜まってくると喋らない時間が増えて気まずくなるし、知らない人だったら人見知り発動するし。


............ そう考えたら、人がいてもいなくても変わらんか。


いらんこと考えてたらまた疲れたな。


周りに他の何かがいるわけもないと勝手に判断したが、念のため周りを忙しなく確認してからその場に腰をおろした。


「あー学年集会思い出す~、かてー。」


ま、体育座りしないだけでもマシか。

おー、何だこの床、歩き続けて体が火照っているためかかは分からないが、床がほんのり冷たく感じた。


「心地いい!」


大の字で寝そべってみる。

勿論床が心地いいからって公共機関で横たわるような変人ではないぞ俺は。


ただ、ここは誰もいなさそうだし、何ならさっき俺直座りや直で寝そべってたからもう抵抗がない。


「はぁー、ここまじでどこなんだ?」


植物どころか何か生えてきそうな土すら見つからない。もう石レンガ、石レンガ!石レンガ!.......てな感じです。


まぁー可笑しいよね。

余程のことがない限りこんな手の込んだ床作るかね?


まさかここ地球よりすごい未来だったり?

だったらどうなのかな?スマホバージョン400ぐらいになってんのかな。


何にせよ、よー分からんことだけ分かる。


いつまで彷徨えばいいか分からんが、なんとかして出口は見つけたいな。


あー歩きたくねぇ!


そんな緊急事態なのにバカみたいな呑気さをかましながら俺は脳に鞭を打ち、無理やり100tトンより重い腰を上げて、再び歩きだす。





ねぇ、いつになったら出れんの?

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