第5話 亡国の危機

 王女リオネルの話ではこのアヴァロン王国は危急存亡の状態にあるとのことだった。

 いやあ、それにしても本当に理緒に良くにているな。 

 仕草や声もほぼ同じだ。

 しゃべるときについ頬を撫でる癖も同じだ。



 今から約一年前、王国の各地に突如魔族の軍勢があらわれ、主要な都市を攻撃し始めた。

 彼ら魔族は魔王軍を名乗り、王国の至るところで正規軍と戦いを繰り広げた。

 魔王軍の圧倒的な戦力と戦闘力の前に十万のアヴァロン王国軍はなす術なく破れ去り、主要八都市のうち七つの都市は陥落し、現在は首都キャメロンとその周辺を残すのみとなった。

 王族のほとんどは魔王軍との戦いで命を落とし、残るはリオネル王女ただ一人。

 戦力はラインスロット率いる近衛団千名のみという有り様であった。


 まさに風前の灯火の状態を打破すべくリオネル王女は魔道師にして予言者のエウリュアレに相談した。

 エウリュアレの提案で千年前にも同様に魔王軍により壊滅的な打撃をこうむった王国を救ったという伝説をもつ七騎士を異世界から召還することになった。

 藁にもすがる思いでリオネル王女は魔術師エウリュアレに召還の儀式を命じた。


 そしてその召還の儀式によって異世界からアヴァロン王国に呼び出されたのは僕をふくめた八名だったということだ。

 たしかに一人多い。

 多分余計なのは僕だ。

 僕以外の七人は全員学業優秀で容姿端麗、それぞれに能力があり、個性もある。

 僕だけが内向きで取り柄といえば強いてあげるなら妄想とイラストぐらい。

 そのイラストも七人のうちの一人である真田雪には遠く及ばない。

 真田雪は美術部に所属し、国や県のコンクールで何度も最優秀賞に選ばれている。

 篠山なんかは雪様と呼んで敬愛していた。

 悪いけど僕の好みは背が高くてグラマーな女性だ。すなわち鷹峰麗華その人だ。



「なるほどね、よくわかったよ。俺たちでよかったら力になります、王女様」

 そう言い、爽やかな笑みを浮かべるのは七人の星たちセブンスターズのリーダー格結城涼だ。

 絵に描いたような爽やかな好青年。バスケ部のエースで彼を好きにならない女子はいないとさえ言われている。


「涼がやるっていうなら俺はかまわないぜ」

 本田政勝が筋肉質な腕をくみ、結城涼の意見に賛成する。


「ええ、わたくしもよろしくてよ」

 羽柴マリアも承諾する。

 帰国子女の羽柴マリアは英語部の部長だ。

 しかも父親は貿易会社の社長をしている。

 才色兼備のお嬢様である。さらに本人は読者モデルをしているらしい。


「その話乗ったよ」

 石川咲夜が言う。

 鷹峰麗華に次いで背の高い彼女はバレー部のキャプテンである。かなりのグラマーで石川咲夜の試合を見に行く男子は数知れず。

 僕は鷹峰麗華のほうが断然美人だと思うけどね。


「咲夜ちゃんがそう言うなら私も協力します」

 真田雪も賛成した。

 小柄で顔も小さい。大きな丸目がねがチャームポイントだ。

 篠山なんかは合法ロリですよと嬉しそうに語っていたな。

 僕は断然、鷹峰麗華のほうがいいけどね。


「ああ、私も異論ないな。私は正義の味方だから」

 トリをつとめるのは絶世の美少女鷹峰麗華。ボリュームたっぷりすぎる胸の前で腕をくみ、首を縦にふる。

 七人の星たちセブンスターズが賛成する以上僕も異論はない。力にはなるとは到底言えないが。



「皆様、本当にありがとうございます。現状皆様がただけが最後のたよりなのです。どうか我が国をお助けください」

 涙ながらにリオネル王女は言う。

 女の子にこんなことを言われたらことわれないよね。

 ましてや妹そっくりの王女様に言われたらやるしかないよ。



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