【🏝完結🐚】波長480nmの、

浩太

0

 海を、見ていた


 重たい

 鈍色に霞む海を


 手のひらに収まる木箱に入って

 帰ってきた弟を抱いて


 「そう、」


 不思議と涙は溢れなかった


 「蒼のためなら兄さんは、」


 海を、空を

 かき消してゆく雪に

 気持ちの芯まで凍ってゆく


 「なんだって、できるんだよ」


 弟が命を預けた真冬の海は

 その日から

 どんなに季節がすすんでも

 色を変えることはなかった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る