蝉の声

蝉の声で目が覚めた。

ラジオ体操に遅刻した、そんな気持ちになって焦る。実際は今日一日何もないというのに。


冬は何もしたくないのに、夏は何も予定が無いと悲しくなる。それはやっぱり休まず、鳴き続ける蝉のせいだろうか。


蝉の声は無条件に、夏の思い出を呼び覚ます。

良いものも、悪いものも。

何もしなかった夏の夕暮れ。

どうやっても取り戻せない過去の後悔について思いを馳せてしまった。どうしようもないのに、涙だけは流れて耳に流れ込む。


そのまま寝てしまったようだ。

目が覚めると、部屋は濃紺に染まっていて窓の外では少し時差ボケした蝉が鳴いているのが聞こえる。コンサート会場でくしゃみをしてしまった時の気持ちを、この蝉ならわかってくれるかもしれない。


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