第21話 修正案件

 どこかに慢心があったのかもしれない。


 楽なクエストだと。


 メインクエスト上の通過点に過ぎないと。


 でも……。



 『性別』は、どうしようもないって!!!!!



 主人公が男じゃないと進められないメインクエストなんて、女の子ルルナが主人公になった時点でゲームオーバーじゃん!


 修正アップデート案件だろ……これ……。




 《エルフの里》入り口に戻ってきた俺は、頭を抱える。


「すみませんでした……私が頼りないせいで護衛役に選ばれなくて……」


 気落ちした様子で頭を下げるルルナ。


「違う、ルルナのせいじゃない。ルルナは何の問題もない、だから気にするな」


「…………はい」


 ルルナは小さく頷いた。


「まったく! 女が立ち入れないって、どういうことかしらね!! そんな儀式、無視して《ゆうとうフィーリヤ》に入っちゃおうよっ」


「それはできない」


 この世界では、フラグを無視して強引にクエストを押し進めることはできない。

 それができないからこそ、こうしてコツコツと『リング』を集めているのだ。


「じゃあ、いったいどうすれば…………アタシも一応『リング』装備者だけど、可愛い女の子だからなぁ……」


 自分で可愛いとか言ってしまうところがチェルシーらしい。


「……あっ! 私、良いこと思いつきました! ヴェリオさんが『リング』を装備すれば良いんですよ! ヴェリオさんは男性ですし、きっと護衛役に選ばれます!」


「その手があったわね! というか、そんな簡単な解決策があったなんて!」


 ルルナとチェルシーは手と取り合って喜んでいる。


 しかし。


「いや、その手は使えない」


「え? なんでですか?」




「…………俺、『フェイタル・リング』を装備できないんだ」




 ──そう。


 俺は、前回のサブクエスト《真心弁当》を繰り返す間、様々なことを試してみた。


 その際、自分自身に《装備制限解除》スキルを掛け、『リング』を装備できるかどうかも確認したのだ。


 結果。

 裏ボスは『リング』を装備できない、ということが判明した。


 何度やってみても『──魔神ヴェリオーグはフェイタル・リングを装備できません──』というシステムメッセージが表示されるだけだった。


 俺だけ装備できないのは、なんかショックだが……。


「そうだったのですか……すみません、そうとは知らず……」


「ごめんなさい、ヴェリオ様……」


 2人の顔に咲いた花が急にしぼんでいく。


 深刻そうな顔で謝られると、なんか余計にダメージくるな……。


 しっかし、なんで表ボスの悪逆皇帝ディアギレスが装備できて、裏ボスが装備できないんだよ。不公平だろ……。


 って、今はそんな愚痴を言っている場合ではない。


「はぁ……これから解決策を探さないとな……とは言っても、現状では何も思いつかないけど」


「ルルナが男になってくれたら、クエスト進められるんだけどねー。まぁ、さすがのヴェリオ様でも、性別を変えるのは無理よね……」


 性別を……変える?


「それはいくら何でも無理ですよ、チェルシー。私は聖女見習いであり、生まれる時も天に召される時も女なのです。……それに……男になったらヴェリオさんと一緒になれないですし……ぶつぶつ」


 女……男……。


「ん? ルルナ? 最後のほう聴こえなかったけど、なにか言ったかしら?」


「い、言ってないです! 何も言ってないです!」


 女……男…………女男?




「あああぁ!!!! 良い方法、思いついたぞ!!!!」




「うわっ、びっくりした! 急にどうしたのよ、ヴェリオ様」


「ルルナを男にすれば良いんだよ! うんうん! そうすれば問題ない! ははは! 簡単なことだった!」


「えええええええ!? ヴェリオさん、性別変更もできてしまうのですか!? そ、そ、それは……ちょっと困るというか……私、これまでずっと女でやってきたものでして……急に男性になると、生活様式も変えないとですし……トイレとか……」


 相変わらず天然なことを口走る聖女様である。


「大丈夫。ルルナにはに男になってもらうだけだから。性別を変えるわけじゃない」


「え……それって、まさか……」


 チェルシーは俺の作戦を理解してくれたようだ。


「ルルナには男のをしてもらう!」


「「ええええええええ!!!!!」」


 《エルフの里》に若い女の子の叫び声が響いた。






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