とらきちのはなし

@elino414

第1話  序 ねこの国について

ねこの国がありました。


ねこの国の住人になる条件はたったひとつだけ。

「ねこであること」


えっ そんなの当たり前だろうって?

そうなんです。

あたりまえだのクラッカーはねこの国でも既に死語。

ねこの国では、あたりまえだのねこじゃらし。


では、すこしばかりトリセツです。


ねこの国では、まず、姿が完全なねこであることが必須です。

ここをクリアすると次のステップは国民審査。

といっても、それほど難しいものではありません。

ねことして生きることへの覚悟さえあれば、結構オートマチックに流れ作業で通過しますから、何の心配もありません。

痛くもかゆくもなくて、なんだかぼーっとして夢見心地でいるうちに、終了です。

ね、簡単でしょう?

変なチップを挿入されることもないし、もちろん、ワクチンだかなんだかの変な薬物を注入されることもありません。

ましてや、遺伝子操作なんて、もっての他。

外道の極みです。

なにせねこの国ですから。


ねこの国からの退去も自由。

禁断症状に苦しむこともありません。

しつこく理由を追及され、翻意を促されたあげく、反省だの総括だのとつるしあげられることなんて、ありえません。

まあ、ねこチュールの味が恋しいと、せつなくなることは、たまにあるようですが。


ですから、ねこの国には、ねこの姿をしていながら実はねこじゃない、「ねこもどき」も結構たくさんいます。


たとえば、ついこないだなんかは、カタツムリが国民審査にきたものですから、結構みんなでたいへんな作業になりましたっけ。


大きさは、なにしろカタツムリ出身なもので、一定以上はどうしても無理で、それなりの小さいねこになりました。

歩き方も、まあ、なんていうか、ちょっとくねくねしてますし、ゆっくりしたスピードでの移動になります。

話し方ものんびりでしたから、審査会に出ていたねこのほとんどが寝てしまうありさまでした。

そういうねこさんをみかけたら、前世はカタツムリさんかしら、って思ってあげてください。


山鳩さんなんぞはもう、やっとで念願のねこになったものの、嬉しすぎてすぐに高いところに上がってしまうものですから、降りられなくて泣き出す始末。

翼がないことを忘れていたのです。

レスキューが出動したものの、大暴れ。隊員のみんなが困り果てていたものです。

まあ、結局、何とかなったんですけれどね。

なにせねこの国ですもの。


ではまた、明日!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る