第26話 羨ましかった



本当の私はどこ?

本当の私は蒼を迎えに行くのを面倒だって思ってたの?

魔法を使ったのはママのせいだって思ってたの?


頬が冷たい。

いつの間にか涙が流れていた。

自分の全てが否定されたような気分だった。


「そんなこと思ってない。

蒼に魔法を掛けたのは私、全部私が悪いから。

迎えに行くのも面倒じゃないよ、、、。」


「「「「「本当に?一度も思ったことはない?」」」」」


鏡の中の幼い私、今の私、下着姿の私、制服姿の私、何十人、何百人、何千人の私が一斉にこちらを見て、同じ言葉発した。


「ないよ!!!!!」


人生で一番くらい大きな声が出た。

手にギュッと力を込めて、握っていた。

私、怒ってるんだ。


「思うわけないじゃん!!!

私のせいで蒼は自由を失くしたんだよ?

一人でコンビニすら行けない、友達と遊びに行くことも、彼女すら作れない。

蒼からたくさん奪った私が、そんなこと思っちゃダメなの!!!!!」


涙が言葉がボロボロと溢れる。

止められない。


「私、部活に入りたかったな。」


「私、塾に通いたかった。」


「私、女子高に通いたかった。」


それでも鏡の中の“私たち“は口撃することをやめてくれない。


「そんなこと思ったことない!!!

そんなこと、、、。」


“私たち“の言葉が胸に突き刺さる。

私は嘘をついた。

テニス部に入った友達が羨ましかった。

成績が下がった時に塾に行けたらなと考えたこともある。

従姉妹の女子高の可愛いセーラー服が憧れだった。


“私たち“の言葉が次から次へと私の耳に入ってくる。


「蒼大好き!」


「独り占め出来て嬉しい!」


「魔法が使えて良かった!」


この言葉も突き刺さった。

全部、全部心当たりがあった。


私最低だ。

私のせいで蒼に辛い思いを何度もさせてるのに喜ぶなんて。

蒼がこんなこと知ったらなんて言うだろう。


「詩織、最低だね。」


鏡の中に蒼が現れた。

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