第12話 行方不明




その日、自宅で夕飯を食べていると電話が鳴った。


「はい、春日です。

あら、先生?」


ママが出た電話の相手は先生らしい。

何か悪いことしたっけ?テストの点数がそんなに悪かったのかな?

自分が怒られる未来が浮かび、小さくなって夕飯を口に運ぶ。

味噌汁の味がしない。


「娘に聞いてみますね。」


ママが私の方に振り向く。


「詩織、帰りに奥田くん見なかった?」


予想外の言葉に少し、固まる。

頭の中で帰り道の記憶を辿った。


「見てない。」


「そう、、、。」


ママは壁に向き直し、電話の続きをする。

どうして先生は奥田くんのことを聞いてきたのだろう?

考え事をしながら食べていたら、お米を一粒溢してしまった。


「奥田くん、お家に帰っていないらしいの、、、。

親御さんと、先生たちで探しているらしいわ。」


私が洋服から米を取っている間に、ママと先生の電話は終わっていた。

電話の内容をパパと話している。


「そりゃあ心配だね、迷子にでもなってるのかな?」


迷子という言葉に胸がザワザワした。

もしかして、、、奥田くんはまた迷子になってるのかもしれない。

あの時みたいに、、、。

そう思ったら今度は体がウズウズした。

動き出さずにはいられなかった。


「ママ!パパ!私、奥田くん探して来る!」


言い終わった時にはすでに玄関にいた。

履き慣れたスニーカーに足を入れ、マジックテープを止める。

ドアノブに手をかけ、押す。

ドアが開くと同時に外へ飛び出した。


「詩織!待ちなさい!」


後ろの方でママの声が聞こえたけど、私の足を止めることは出来なかった。




勘だけで走る、走る、走る。

息は切れているし、足がだんだん重くなる。

それでも走る。

奥田くんがどこに居るのかはわからない。

でもなんだか気配がする。

気配を辿って走る、走る、走る。

20分くらい走ったところで公園を見つけた。


「奥田くん、、、?」


ここに奥田くんが居る気がする。

私は公園に足を踏み入れた。




公園には滑り台、シーソー、ブランコ、砂場があった。

中央には山のような大きな遊具が一つ。

滑り台や、クライミングが出来るようになっていて中に入ることも出来るようだ。


「奥田くん、みーつけた!」


山のような遊具の中に、体操座りで丸くなる奥田くんが居た。

横にはランドセル、頭には黄色い帽子。

目には涙を浮かべていた。


「か、、、春日さん、、、。」


私の声に振り向いた顔は、涙でぐちゃぐちゃだった。


「帰ろう!奥田くん!」


遊具から出てきた奥田くんと手を繋いで公園を出ると、先生とパパが立っていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る