授業と罰則

 Side エリク・クロフォード

 

 予鈴が鳴り、教室が慌ただしくなる。

 そして教室に担任の先生でもあり、バトルスーツの教官でもある泉 リョウコ先生が入ってきた。

 自然な感じのボブカットのクールな雰囲気が漂う若い大人の女性と言った感じだ。

 

「昨日はあんな大惨事があり、立場上罰則を与えた形になりましたが――こうして皆さん欠席する事もなく、教室に出てきてくれた事を嬉しく思います」


 ここで「ただし」と言ってリョウコ教官はこう続ける。


「昨日の経験は今後のバトルスーツの操縦訓練やクロガネ学園の授業、将来の選択肢に置いて貴重とも言える経験ですが、前回の戦いは特例であり、学園側としては生徒が戦うことは奨励しておらず、罰則が軽く済んだのは特例措置です。くれぐれもそこは勘違いしないように」


 教室が緊張感と暗い雰囲気が混ぜ合わせた空気になる。

 教官の言う事は何一つ間違っていないからだ。


「さて、それでは授業を始めます」



☆ 



 授業その物はバトルスーツの基礎的な知識や中学時代の勉学の基礎などを再確認するような流れだった。


 合間の休み時間ではシュンは一人場トススーツの雑誌を読み、マリは何だかんだで交友関係を広げていっていた。


 そうこうしていく内に罰則の時間が近づいてきた。


 =放課後・クロガネ学園バトルスーツ格納庫=


 授業で使われたバトルスーツの清掃作業だった。

 教官も監督責任として付き合ってくれている。

 僕も真面目に取り組んだ。

 シュンやマリは何だか楽しそうだ。

 

 本来この仕事を行う整備科の人達はバトルスーツの清掃のやり方を1年E組の人達にレクチャーしていた。


 僕もそのレクチャーを受けて手際よく清掃していく。

 バトルスーツの清掃は地味だが軍隊において靴や軍服、所持しているアサルトライフルの状態で士気を確認すると言う方法がある。

 バトルスーツも同じで綺麗であればある程士気が高い証明になる。

 

 つまりバトルスーツの清掃も重要なのだ。  

 

 みな、概ね真面目に取り組んでいる。

 だからか予想よりも早く今日の罰則は済んだ。



 =夕食の時間、食堂にて=


 夕食の食堂は人でごった返していた。

 そんな場所で僕はシュンと同じテーブルで夕食を食べる。


「これが一週間続くのか――」


「大丈夫?」


「まあ泉教官の言わんとしている事も分かるしさ。真面目に取り組む他ないだろう」


「うん。きっとプラスになるよ」


「だな。将来はバトルスーツの整備士とかも悪くないかもな――エリクは将来どうするか決まってるのか?」


「僕は――どうしたいんだろう」


 困りながら僕は言った。


「……正直言うとエリク、君がただの新入生じゃないのは頭の悪い俺でも何となく分かる」


「シュン――」


「それでも俺達にとっては命の恩人なんだ。それだけは伝えておきたかった」


「……」


 僕はなんと言えばいいのか分からなかった。


「さて飯食って明日に備えるか――」


 そう言ってシュンは食事に集中する。

 僕もそれに倣って、逃げるように夕飯を食べた。 


(僕は――この学園にいて良いんだろうか)


 皆、夢や目的がある。

 学園でヒーロー扱いの自分は、まるで現実から逃げ込むように、伝手でこの学園に入学した。

 そんな自分が、なんだかとても情けなく思えた。

 

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